気候変動対策

緩和策と適応策
気候変動対策の両輪

緩和策と適応策

地球規模の温暖化が進行している現在、その影響は、単に気温の上昇や海面の上昇に止まらず、渇水・洪水発生リスクの増加や野生動物や植物を含む生態系などへの影響が懸念されています。

気候変動に対する対策は、図に示すように大きく分けて二つあります。一つは、気候変動(温暖化)の原因となる温室効果ガス(CO2)の排出を抑制する「緩和」、もう一つは既に起こりつつある、あるいは起こりうる気候変動(温暖化)の影響に対して、自然や人間社会の在り方を調整する「適応」です。

まずは、気候変動をもたらす原因に直接働きかける「緩和」を確実に進めることが必要ですが、最善の緩和の努力を行なったとしても、世界の温室効果ガスの排出を削減するには時間を要するため、ある程度の気候変動の影響は避けられないと言われています。

したがって、「緩和」と同時に影響への対処として「適応」への取り組みも不可欠となってきています。

国際レベルでの緩和策

気候変動に関する国際連合枠組条約(UNFCCC)

気候変動枠組条約は、大気中の温室効果ガスの濃度の安定化を究極的な目的とし、気候変動がもたらすさまざまな悪影響を防止するための国際的な枠組みを定めた条約で、国連が1994年3月に発効しました。 温室効果ガスの排出・吸収の目録、気候変動対策の国別計画の策定等を締約国の義務としています。

京都議定書とパリ協定

平成9年に京都で開催された地球温暖化防止京都会議(COP3)において、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素(亜酸化窒素)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)及び六ふっ化硫黄(SF6)の6種類の温室効果ガスについて、先進国の排出削減について法的拘束力のある数値目標などを定めた文書を採択し、開催地京都の名を冠した「京都議定書」として2005年に発行しています。具体的には、先進国の拘束力のある削減目標(2008年~2012年の5年間で1990年に比べて日本-6%、米国-7%、EU-8%等)を明確に規定しています。

更に、2015年にフランス・パリで開催された気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、気候変動に関する2020年以降の新たな国際枠組みである「パリ協定」(Paris Agreement)が採択されました。
パリ協定には、世界共通の長期目標として2℃目標の設定や、すべての国による削減目標の5年ごとの提出・更新、各国の適応計画プロセスと行動の実施、先進国が引き続き資金を提供することと並んで途上国も自主的に資金を提供すること、共通かつ柔軟な方法で各国の実施状況を報告・レビューを受けること、JCMを含む市場メカニズムの活用等が位置づけられています。

代表的な緩和策

脱炭素エネルギーの導入
(非化石エネルギーの利用促進)

CO2を排出しないエネルギー、たとえば再生可能エネルギー(再エネ)の導入量を拡大することです。また次世代エネルギーである水素エネルギーも、使用時にCO2を排出しないことから、注目すべき新エネルギーとして研究が進められています。
非化石エネルギー源の利用拡大、および化石燃料の高効率化による有効利用を促進することを狙う「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」通称「エネルギー供給構造高度化法(高度化法)」では、小売電気事業者に対して、供給する電気のうち「非化石電源(非化石エネルギーを使って発電する方式)」でつくられた電気が占める比率(非化石電源比率)を、2030年度に44%以上にするよう求めています。
図に示すように、再生可能エネルギーの電源割合はまだ低い水準にありますが、太陽光の発電コストが初めて原子力下回り発電コストで最安になったなどのニュース(2021年7月)もあり、推進は進んでいます。

ガソリン車からEV車へ

モータリーゼーションの時代、自動車の排気ガスに含まれる温暖化ガスの排出量を削減することは重要な課題となっています。
排出量削減に向けて、ディーゼル・ガソリン車からハイブリッド車、さらに電気自動車、水素自動車へと自動車業界は開発を進めています。
2021年7月、EU=ヨーロッパ連合は包括的な気候変動対策として2035年以降の新車販売を排気ガスを出さない「ゼロエミッション車」にするとし、ハイブリッド車を含むガソリン車やディーゼル車の販売を事実上、禁止する方針を発表しました。
ゼロエミッション車とは、搭載された動力源から健康および環境に有害な二酸化炭素(CO2)や窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、粒子状物質(PM)などの大気汚染物質や温室効果ガスを含む排気ガスを排出しない車両で、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)、自転車、電動自転車、ソープボックスなどが該当します。
EUの方針に対し、ヨーロッパ自動車工業会は、電気自動車などの普及率は各国の経済規模によるとして「EUは、取り残されている国や市民がいないかどうか今すぐ確認すべきだ」として反対の意向を示していますが、今後、脱炭素に向かってEV車が増加していくのは間違いありません。

気候変動の影響

適応策が必要な気候変動による影響

  • 自然・生態系、農業への影響

    気温の上昇により、積雪量の減少による生活用水の不足、病害虫による感染症の増加、植生の変化、一部の野生動物の分布拡大、サンゴの白化現象などの生態系への影響が確認されています。また、夏季の熱中症の増加など、住民生活も影響を受けています。

  • 気候災害の増加

    国土交通省によると、このまま温室効果ガスの排出が続いた場合、短時間強雨の発生件数が現在の2倍以上に増加する可能性があるとされ、さらに、降雨強度の更なる増加と、降雨パターンの変化が見込まれいて、豪雨による水害や土砂災害などが起きる頻度が上昇するとされています。

代表的な適応策

気候変動による自然災害への適応

国土交通省は、治水計画の策定にあたり気候変動を踏まえた将来の降雨強度等の予測を考慮し、治水計画の整備メニューや整備手順を見直す検討を開始しています。
また、ハード対策の強化に加えて、大規模氾濫減災協議会等を活用し、多くの関係者の事前の備えと連携の強化により、複合的な災害にも多層的に備え、社会全体で被害を防止・軽減させる対策の強化を緊急的に図るべきである、として、「水防災意識社会 再構築ビジョン」を掲げて、住民が自らリスクを察知し主体的に避難できるよう、より実効性のある「住民目線のソフト対策」への転換を図っています。

生物多様性分野における気候変動への適応

気候変動に対し生態系は全体として変化するため、これを人為的な対策により広範に抑制することは不可能であり、気候変動以外の要因によるストレスの低減や生態系ネットワークの構築により、気候変動に対する順応性の高い健全な生態系の保全と回復を図り、モニタリングにより気候変動に伴う生態系と種の変化を把握するという適応策が環境省により「生物多様性分野における気候変動への適応」でまとめられている。この中で、生態系への適応策については、どのような生態系や生態系サービスに着目して対策を取るか、積極的な干渉を行うべきか、といった方針の選択がまず重要で、適応策の計画・実施にあたっては、関係する国の行政機関、地方公共団体、地域住民、NGO や NPO、自然環境に関し専門的知識を有する者等の多様な主体が情報を共有し、十分な合意形成を図り、役割分担をしつつ、連携して総合的に対応することが必要とされています。

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