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環境ビジネス情報

環境ビジネスで働く人に聞く!

日本の持続可能性を支えていくために

公益財団法人日本生態系協会 理事 堂本 泰章 様

グレイスではエコリク勉強会や各種イベントを通じて就職支援・マッチングの実態から視る環境ビジネス・環境産業の全体観や具体的な事例についてお伝えしてきました。
今回は日本生態系協会で理事をされている堂本泰章様にお話を伺いました。

堂本様のご経歴についてお聞かせください。

大学を卒業後、関西の林業会社に3年近く勤めていました。当時から埼玉に縁があったのですが、開発によって自然が失われていく中、本格的に埼玉県で自然を守る組織を立ち上げると聞き、会社を退職し、こうした活動を始めることになりました。

埼玉で保護活動をしていく中で、県内外のさまざまな問題が見えてきます。立ち上げ後約10年が経ち、軌道に乗りつつある手法で日本の自然を守っていかなくてはと、新たに日本生態系協会が立ち上がりました。また、土地を買い取ることで自然を守る手法の公益社団法人日本ナショナル・トラスト協会へも社団法人化の前後からその活動に関わっています。現在は埼玉県生態系保護協会の事務局長のほかに、日本生態系協会の理事と日本ナショナル・トラスト協会の常務理事を勤めています。

日本生態系協会の事業内容についてお聞かせください。

基本的には、持続可能な国づくり・地域づくりを目指しています。各地の環境はさまざまであり、また開発の仕方、自然保護の仕方もさまざまです。その中で共通しているのは、土台となる自然生態系を法律や制度できちんと担保してこそ、持続可能なまちづくり・国づくりが確実に進んでいくということです。当面としては日本の法律の中で生態系保全や自然再生、持続可能な国づくり・地域づくりに向けた制度設計ができるよう、国や地方自治体などに働きかけています。

私自身、日本生態系協会の理事として、国会の場へ出向いて政策要望を行っています。それを下支えしてくれているのが、調査研究や普及啓発、資格認証などあらゆる分野で仕事を担う協会のスタッフです。例えば調査研究に関わるスタッフは、野生動植物の現地調査だけでなく、そこで得た結果からその自然環境をどう担保していくかを考えるわけです。その際、制度や法律を専門とするスタッフの存在も欠かせません。また、地域の住民の中に入ってどのようにまちづくりができるかを提案するスタッフがいれば、それを広報するスタッフもいます。そして最終的に議員、あるいは行政にどのようにアプローチするかを考える政策部門のスタッフもいて、皆がそれぞれの専門分野で知恵を出し合い、協会としての提案をまとめていくわけです。

協会が現在、力を入れて取り組んでいるのが「大型水鳥を指標にしたエコロジカル ・ ネットワーク構想」です。これは河川を環境の軸にした持続可能な土地利用あるいは地域づくりの考え方です。いくら良好な自然でも、ある一つの地域に存在しているだけでは、利用できる生物も限られてしまいます。生態系ピラミッドの頂点に位置する大型水鳥の存在は、「良好な自然が川を軸として広範囲でつながっている(ネットワークしている)こと」の指標になるのです。ですからトキやコウノトリといったような大型水鳥がきちんと共存できる地域を目指すことが、持続可能なまちづくりをすることにつながると思い、あらゆる分野のスタッフが知恵を出し合いながら活動しています。

堂本様が実際に働きかけた、 関わってきた事例についてお聞かせください。

最近の取り組みとしては、千葉県で協会がスタートさせた森の墓苑事業です。千葉県の砂利採掘跡地を自然再生しようという取り組みです。ただし、その土地の購入や整備などでお金がかかります。そこでその資金づくりとして新たなしくみ「自然再生墓地」を協会として考えました。世間的には樹木葬という言葉がありますが、単なる樹木葬とは違い、地域在来種を植えて森を再生するのです。森の再生のお手伝いを「森になる墓地を購入する」という形で協力していただこうとスタートしたアイデアです。

立ち上げ前までは私はずっと環境保全の現場をやることが多かったのですが、自然再生墓地とはいえ、土地利用としては開発事業と位置付けられます。私は開発事業者の担当役員として、地元住民の方々への説明会や役所の協議会への説明、認可する県の方へ説明に行くなど、今までと違った角度からの仕事をして、さまざまな手続きがどのように進んでいくのかがわかり、とても新鮮であると同時に勉強になりました。

あとは「ビオトープ」や「エコロジカル・ネットワーク」という言葉ですが、日本では80年代はみな聞いたことがなく、理解もされていませんでした。「ビオトープ」は「生きものの生息空間」という意味で、ドイツで作られた言葉です。またヨーロッパ、EUでは、90年代からエコロジカル・ネットワークという考え方がとても進んでいました。協会も80年代後半から90年代にかけて大学教授にご指導いただいたり、協会からドイツを始めヨーロッパの政府や自治体、大学教授、NGOの方々に連絡して現場視察を重ねたりしました。時にほかのコンサルタントの方々や行政職員、大学教授の方々と一緒に行き、日本でどのように導入できるか検討しています。こういうかたちで勉強させていただきながら、ビオトープやエコロジカル・ネットワークという言葉の意味を学び、広めることに力を注ぎました。少しずつですが日本にも言葉の意味や取り組みが浸透していると思います。初期の動き出した時に関わらせていただいたことは、私にとってうれしいことです。

また現在、一般的にもビオトープという言葉はだいぶ定着してきたと感じますが、逆にとても本来の意味の「野生生物の生息空間」を生み出しているとは言えないような事業も散見しています。そこでビオトープ事業を正しく埋解して広める「ビオトープ管理士資格制度」を立ち上げたのですが、その際の制度設計や運営などにも携わりました。そういった意味ではやってきたことが形になってきているので良かったと思います。まだまだこれからですけどね。

堂本 泰章(どうもと やすあき)
昭和31年 福井県大野市生まれ

■主な現職:
(公財)埼玉県生態系保護協会 事務局長
埼玉県自然学習センター・統括責任者
(公財)日本生態系協会 理事
(公社)日本ナショナル・トラスト協会 常務理事
(公財)さいたま緑のトラスト協会 理事
NPO法人あらかわ学会 理事
日本ビオトープ管理士会理事

■主な委員:
関東エコロジカル・ネットワーク形成に関する検討委員会
荒川太郎右衛門地区自然再生事業協議会
福井県コウノトリ定着会議
北本市環境保全審議会(会長)
加須市環境審議員
朝霞市みどりの推進協議会(副会長)
朝霞市生物多様性市民懇談会(会長)