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エネルギー 2018年6月号 「おもてなし」の先に

  6月(水無月) 24節気 ⇒6月6日(水)〜芒種・6月21日(木)〜夏至

青い海、白い肌とサンゴ礁

初夏がやってきました。紫外線も強くなり帽子や日傘などが活躍する季節です。外出時には日焼け止めを使う方も多いかと思いますが、この5月、米国ハワイ州では2021年以降に「日焼け止めの販売を禁止」する法案(SB2571)が議会で可決されました。ちょっと気になるニュースですね。

対象となるのはオキシベンゾン(oxybenzone)またはオクチノキセート(octinoxate)を含む日焼け止めで、現在3,500種以上の商品が流通しているそうです。これら2種の化学物質は、サンゴ礁の白化や海洋生物の遺伝子損傷を引き起こす可能性があるとの研究成果が報告されており、州議会では今年1月から審議が進んでいました。

法案はマイク・ガバード(Mike Gabbard)上院議員が提出しましたが、日焼け止めを製造・販売する企業やハワイ商工会議所、ハワイ医師会等は反対の立場を示しました。2種の化学物質は米国食品医薬品局(FDA)が認可した成分であり、紫外線から肌を守り、皮膚がんを防ぐ日焼け止めとして安全性と効果を認められていることなどがその根拠です。
ハナウマベイをはじめ、ハワイには人々を魅了するサンゴ礁が豊富に存在し、州政府も以前から海洋資源の保護に注力しています。ガバード議員は「世界初の先導事例となる『黄金律』の制定に、ハワイ州は最適な場所です」と述べています。今は法制化に向けて州知事の署名を待つばかり、施行後は処方箋がある場合を除き、対象製品の流通と販売が禁止されます。人の健康と環境保護をいかにして両立させるか、今後の行方に注目したいですね。

「おもてなし」の先に
◆◆〜東京都のエネルギー計画〜

いよいよ2年後に迫る東京オリンピック・パラリンピック。競技場建設、日本人選手の育成と活躍、インバウンドへの対応など様々な話題がありますが、皆さんは何を期待されているでしょうか。今回は「選手村」に着目し、東京都のエネルギー計画をご紹介します。

オリンピック選手村は、ご存じのとおり大会時に各国選手・役員が滞在する宿泊施設です。「村」という素朴な名前は付いていますが、1万人規模での受け入れが可能で、「都市」に近い様々な機能を備えています。2016年のリオデジャネイロ大会(ブラジル)では、女子選手向けのビューティーサロンやゲームのできるレジャー設備なども完備され、各国選手団から高い評価を得ました。

ところで、足掛け約1ヶ月の大会期間終了後、選手村地区はどのような姿になるでしょうか。以前は取り壊されるケースもあったそうですが、近年は居住施設を公営住宅・分譲住宅に転用し、長期的に活用する例が多くなっています。これは、2000年代初期に「オリンピック競技大会の有益な遺産を、開催国と開催都市が引き継ぐよう奨励する」という規定がオリンピック憲章に盛り込まれ、「遺産(レガシー)」と「持続可能性」が大会の重要な要素として、また開催都市の評価項目として定着してきたためです。

2020年東京大会の選手村は中央区晴海五丁目に決定し、既に道路などのインフラ整備と住宅棟の建築工事が進んでいます。総面積約18haの地区内には合計5,650戸の住居が建設されますが、大会終了後には賃貸・分譲住宅として一般向けに提供されます。また、学校や商業施設も建設予定であり、オリンピック後には新しい「街」が晴海に誕生します。東京都は、選手村地区を「誰もがあこがれ住んでみたいと思える街」に再生するため、2017年3月に「選手村地区エネルギー整備計画」を公表しました。これは、晴海五丁目地区のエネルギー供給についてあるべき将来像と施策の方向性を示したもので、水素がキーワードとなっています。

水素の強みは、何といっても低炭素であること。例えば再生可能エネルギーを原料に製造した水素を使えば、発電や熱供給をする際にCO2が発生しません。また、貯蔵性に富んでいるため、災害時に系統電力が途絶えた場合にも、水素ステーションや燃料電池車などからエネルギー源として供給でき、レジリエンスの強化が見込めます。
そこで本計画では、水素供給をエネルギーシステムの大きな柱に位置付けています。具体的には、地区内に水素ステーションとパイプラインを整備します。分譲住宅については最新型のエネファーム(家庭用燃料電池)が全戸に設置され、電気・ガスの需要をまかないます。また、商業施設など街区の建物には純水素型燃料電池を5ヶ所に設置して共用部の照明や空調、高齢者向け共同浴場の給湯などに活用します。また、都は2020年までに燃料電池自動車6,000台、燃料電池バス100台以上の導入を目標としています。
晴海地区では、大会終了後に都心からのBRT(バス高速輸送システム)の運行が本格化され、この路線でも燃料電池バスの積極的な導入が予定されています。今回インフラとして整備される水素ステーションは、車両への供給拠点としても機能します。

東京2020大会後の選手村(イメージ) 水素ステーションの整備予定地 京五輪の選手村におけるエネルギー供給事業のイメージ

本事業は、「公開型プロポーザル方式」で都と民間企業が協力しながら実施します。今年3月には東京ガス、JXTGエネルギー、パナソニック、東芝を含む計6社の企業グループが選定され、都と基本協定を締結し、2020年に向けて実施計画・施工が開始されました。
また、政府が掲げる「福島新エネ社会構想」の元、福島県浪江町で現在建設が進む世界最大規模となる再生可能エネルギーを利用した1万kW級の水素製造工場から、実証運転を兼ねて水素を選手村のエネルギーや燃料電池車で活用する計画も進んでおり、震災復興にも寄与する構想となっています。

この他にも、「選手村地区エネルギー整備計画」には、地区内にある中央清掃工場の未利用排熱による熱供給や太陽光パネルの活用、エネルギーマネジメントシステムの導入など豊富なメニューが盛り込まれています。大会期間中は世界の人々を迎え、その後は「魅力的なレガシー」として長く受け継いでいくために、「災害時の自立性の確保や快適性とエコな暮らしが両立する環境先進都市」のモデルとなると東京都は期待しています。

(選手村地区エネルギー整備計画(東京都))