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環境ビジネス情報

環境ビジネスで働く人に聞く!

「間(ま)」のビジネスで豊かな地域づくりを目指す

一般社団法人産業環境管理協会
製品環境部門 副部門長
兼地域支援ユニット ユニット長 壁谷 武久 様


元経済産業省の役人としてのバックグラウンドを活かしながら、企業の環境管理を支援する事業に幅広く取り組む産業環境管理協会にてご活躍されている壁谷武久様にお話を伺いました。

壁谷様のご経歴についてお聞きかせください。

私は以前、経済産業省にいて名古屋で産業振興の仕事をやっていました。97年の京都議定書を境に、これから中小企業にとっては、大変厳しい経済環境で、環境というものをある程度克服できないとそれが二重苦になってしまうのではないかと考えました。

私のポリシーとして、日本を支えているものづくり産業が更に活性化するためには環境という問題は避けて通れないので、そこをご支援したいという一念がありました。当時、産業環境管理協会(以降、産環協)では、環境配慮設計、エコデザインという概念の元に環境を新たな製品の付加価値として捉え、その開発普及に取り組んでいましたので、役所と民間の「間(ま)」に入れる隙間があるだろうと考え、経産省を退職して2007年4月に上京しました。

大変大きな決断をされたと思いますし、誰もができることではないと思いますが、ここまでご自身を動かした想いは何だったのでしょうか?

40歳を少し過ぎた時期に経産省の本省にいて携わった住宅産業で、なぜ日本の家はこんなに高いんだろうと、サプライチェーンに関心を持ったのがきっかけでした。工業製品は資源採取から廃棄・リサイクルまである程度スコープできるのですが、住宅の場合は、使う材料が多彩で、その材料を加工する人、加工したものを売る人、それを使い設計して建てる人、売る人、すべてばらばらで関連する省庁も違うんです。その問題意識をそのまま名古屋に持ち帰ったということと、環境負荷を問題解決することはサプライチェーン、ものづくり全体の見直しに繋がると感じました。

地域では、情報力や政策決定力などやはり限られており、中央と地方、あるいは省庁間の「間」でも役に立てることがあるのでは、との思い込みから、上京するに至ったのだと思います(笑)。実際に産環協では、やり方次第で各省庁への提案、地域と連携など自分の想いを実現できるという無限性を持っていることが楽しく、動機になったのだと思います。

これまで産環協ではどのような取り組みをされてきましたか?

最初に手掛けたのがライフサイクルアセスメント(LCA)手法の普及です。製品の環境負荷を定量化して「見える化」する手法で、ものづくり産業の上流の中小企業の方々が努力した分をしっかりサプライして需要者側に評価頂けるものだったので、この普及から手掛けました。この手法を応用したカーボンフットプリント(製品の一生で発生する温室効果ガスの総量)の実証事業を、2008年に開催された洞爺湖サミットでの地球温暖化防止に向けた国際的な機運の盛り上がりのもと、2009年度から経済産業省、環境省、国土交通省、農林水産省を巻き込んだプロジェクトとして手がけました。カーボンフットプリントを消費者に見える化し、エコ製品としての評価を商品購入の選択手段としていく。まだまだ、普及や制度設計上、技術的な課題も満載ですが何とか3年間のナショナルプロジェクトとしての取り組みの後、2012年4月にプログラム化して協会の事業として今日に至っています。残念ながら2008年のリーマンショック、2011年の震災で国全体が温暖化に関しての政策の軸足を失ってしまっていて、2020年までは地球温暖化という切り口からは環境でのイニシアティブをとるのは難しい状況ではありますが、国際規格に基づくわが国唯一の「カーボンフットプリント」の第三者検証プログラムとして益々その信頼性を高め、しっかりと継続性をもって取り組んでいくこととしています。

一方でエネルギーに関しては、現在、産業・経済への影響とともに、地球環境への影響を示す一番大きな指標になるわけですが、震災以降、国全体で再生可能エネルギーとしての新たなエネルギー開発・導入の重要性が認識され、これを社会の新しいインフラとして導入していく方向性が、非常に重要になっています。こうした再生可能エネルギーの多くは、自然条件(気象・地象など)に左右される面が強く、日本の国土の中で都市部よりも、自然資源を多く有する地方において、その実現可能性が高まっていると2013年のころから考えていました。

今日いわれる「地方創生」の切り札は、実は、環境とエネルギーを軸に地域資源を活かした形での自立型の地域づくり、もしくは地域内での経済循環創出の実現にあるのではとの思いから産環協の環境に関する53年ものノウハウを上手くネットワーク化して応援したいということで、2015年4月に、「環境とエネルギーを軸に豊かな地域経済・社会、あるいは地域での環境ビジネスの創出」に向けて、「地域支援ユニット」を立ち上げました。

私は地域の産業、地域のものづくりが、地域の雇用と経済を護ると思っているのですが、残念ながら地方自治体だけでは出来ないので「間」に入って何とかしたいと考えています。今スタッフ6人でやっていますが、彼らに唯一ポリシーで言っているのは、我々のビジネスはニッチ、つまり「間」のビジネスをやろうということです。中央省庁と地方行政、地域の中だと自治体と民間企業、権力者とそうでない人、中小企業と大企業との「間」でうまく便利屋さんで使って下さいというのが一番大事な所です。決して私はプレイヤーではありません。ただ、わが国を支える豊かな基盤は、地方と都市を健全に存立させることで、東京にいるとどうしても地域に対しての考えが上から目線になっており、地域のプレイヤーを支える視点が重要であると考えています。本当に国にとって必要なものは、「豊かさ」を実感できる地域社会であり、その屋台骨として地域の産業や働く場所を持続的にもたらす事なんです。それを皆が理解しているのに、地域には何の裁量権も無いということが起きてしまっている。だから、「間」に人が要ると考え、地域支援に取り組んでいます。


壁谷 武久(かべや たけひさ)
一般社団法人産業環境管理協会
製品環境部門 副部門長
兼地域支援ユニット ユニット長