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環境ビジネス情報

SDGsとこれから求められる人材(環境ビジネスで働く人に聞く!)

冷静に環境を捉えられる人間を育てる

武蔵野大学
工学部 環境システム学科 講師
磯部 孝行 様

「環境の専門家/プロフェッショナルになる。2030年までにSDGsを達成する。持続可能な社会を構築する。誰一人取り残さない社会をつくる。」というビジョンを掲げている武蔵野大学環境システム学科。
講師の磯部孝行様にご専門の建築廃材のLCA評価やSDGsなどについてお話しいただきました。

先生のこれまでのご経歴と現在の業務についてお話しくださいますか?

東京理科大学理工学部建築学科に在籍して、卒業研究は「建築廃材の環境負荷削減ポテンシャルのLCA(ライフサイクルアセスメント)評価」でした。産総研のLCA研究センターの研究員の方と建設廃棄物のリサイクルでのCO2削減ポテンシャル、最終処分の削減ポテンシャルを研究していました。
それがきっかけで、大学院は柏の葉にある東京大学の新領域創成科学研究科に進んで、建設リサイクルや建築の解体をメインに研究されている清家剛先生の下で、建材のLCA評価を研究しました。
具体的には、木材、板ガラス、石膏ボード、プラスチックについて国内外を含めて調べました。建築廃棄物は色々な産業と関わっていて、例えば石膏ボードだと電力会社から出た副産石膏を使っていたり、ガラスであれば板ガラスからグラスウールにしたりガラス瓶からグラスウールにしたりなど、資源調達やリサイクルの過程までみると他の産業とつながっています。そこで、「建築だけでなく他の産業とのつながりを含めた系の中での資源利用の最適化は何か?」といったテーマを修士論文の研究とし、LCA評価を用い木材、ガラス、石膏ボード、プラスチック(塩ビ系)を取り扱いました。

修士卒業後の就職とドクターの進学を同時にし、就職先は愛知県庁の建築を所管している建築担当局でした。同時に博士課程にも進学して研究を続けようと思っていたんですが、大学が東京(千葉)で職場が名古屋ということもあり、あまり大学に通えなくて両立できずにいました。
県庁時代は、建設リサイクル法、建築物省エネ法の環境系を所管している部署で、2年間ほど建築に関わる環境法の行政職で、行政として建築廃棄物をどう扱うかなどをしていました。当時、担当者として建設リサイクル法については課題に思うことがありました。その内容として、建設リサイクル法でできる法律の範囲というのがありまして、特定建設資材に関してはリサイクルが義務化されているのですが、その他建設資材については、分別解体の徹底を指導することしかできないといった点です。分別解体の徹底を指導することは非常に重要ですが、その中で、行政職員としてできることは現場管理だけだなと思いが強くなり、行政職員としての限界を感じて、退職をして博士課程に専念することにしました。
修士の時は国内の資源の最適化を研究していたんですけど、その当時からプラスチックのリサイクルに関する問題意識はあったんです。海外にプラスチックが輸出されているけれど、業界関係者はリサイクルされていると胸を張って言うんです。実はその先については誰もわかっていないものが多くて、実際にその先はどうなっているのかを調べなくてはいけないと、それを博士論文の研究としました。塩化ビニル樹脂を用いた建材の塩ビ管と樹脂の窓枠を対象に、国内のリサイクル施設、輸出先の東アジアの国々をみてきて、各国でどういうリサイクルがされているか、日本の廃材の品質がどうかなどを調べてきました。面白かったのは、日本で廃棄された建材由来のプラスチックは品質が良いので、ちゃんと分けられていれば海外は欲しがっている点ですね。特に台湾とかは自国の建材のプラスチックだと品質が良くないので、あえてアメリカや日本の廃材を輸入して品質を上げているとのことでした。つまり、日本では使いにくいと考えられているリサイクル原料ですが、海外では資源として認められており資源の最適化がされているなというのが正直なところですね。2015年に中国へ調査にいった際も、中国の廃プラスチックの需要はまだまだあって、数万トン単位で欲しいので日本にはどのくらいあるのかなど、業者からの問い合わせがあったんですが、それ以降、中国も規制に入ってしまって、今は輸出するのは難しい状況なのかなと思います。
研究対象としては、建材に用いられていた塩化ビニル樹脂だけですが、自身の研究活動をとおして、日本のプラスチックの資源循環のあり方を考えた時に、日本国内だけだと今後需要が落ちるので限界があると感じています。日本国内には一定のインフラ的な規模は必要ですが、やはり国際的な資源循環は、必要な仕組みが必要だと思っています。

最近、廃棄物をリサイクルしたら原料が売れるという時代は終わりつつあると考えていて、ものづくりの視点からリサイクルを考えることが必要だと思っています。ある建築物を建てる際、廃材を使うことの“かっこいい”とか、廃材ならではの特徴を活かした建築材料の使い方とか議論されていくと、建築業界は、大量にゴミを排出する産業ではなくゴミを活用する産業になれるのではと考えていて、廃材の活用を考えるアプローチが必要なのかなと思っています。また、建築物は寿命が長いので、長寿命化することでゴミの対策につながるという考えもあるんですけど、寿命が伸びたところで100年後にはゴミが出ることには変わりがない。やはり資源についてもっと考えていかないといけない業界だなと思っています。
2019年現在、SDGsの考えなども広がり、建築業界も上手く資源を使う方法を検討していかなくてはいけない時代に入っているのかなと思っています。SDGsの視点から建築のリサイクルを述べると、目標12の「つくる責任つかう責任」を通して目標11の「住み続けられるまちづくり」になると思うので、「つくる責任つかう責任」がしっかりできていないと、ゴミを捨てられないなどの事態が起きてしまって、住み続けられない都市に陥りかねないため、上手く資源を使えるような設計技術とかができてくると非常に良いのかなと考えています。


磯部 孝行(いそべ たかゆき)
  • 武蔵野大学
  • 工学部 環境システム学科
  • 講師