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環境保全 2018年5月号 空前のダムブーム?その一方で

  5月(皐月) 24節気 ⇒5月5日(土)〜立夏・5月21日(月)〜小満

オリンピックとゴミ問題

大会2連覇を達成した羽生結弦、「そだねー」が流行語となった女子カーリング、メダルが量産されたスピードスケート、平昌オリンピック・パラリンピックで活躍した選手たちの話題は、祝勝パレードや皇居の春の園遊会出席など各種メディアで紹介されています。
そんな中で、4月上旬に「いまだ山積みの五輪廃棄物に平昌の住民憤慨、気温上昇で悪臭も」というオリンピック後の平昌の現状がニュースになりました。

オリンピック閉幕後2週間以上経っても平昌のいたるところにゴミが放置され、五輪会場の駐車場は巨大なゴミ集積所と化しているというのです。来場者が残したゴミ、各施設の撤去時に発生した一般ゴミなどの回収・処分が追いつかず、リサイクルしようとしても分別もされていない。雪が溶けて埋もれていたゴミも露出して、気温の上昇で悪臭も漂い、江原道特有の強風で周辺に巻き散らかされる。思いもよらない形で残された負の遺産は、居住環境を悪化して、住民からは組織委員会に苦情も申し出されたそうです。

2020年にオリンピック開催を控えている東京は、全国の約10分の1に当たる約450万トン(東京都環境白書2017より)の廃棄物を常時抱えている廃棄物大量発生都市です。オリンピック開催後に平昌と同じような課題が残されないとも限りません。外国人観光客を迎える「おもてなし」も大事ですが、イベント終了後のゴミ処理についても他の開催国のお手本となるような運営を期待したいですね。

空前のダムブーム?その一方で
◆◆日本で初めての既設コンクリートダムの撤去

ダムカード、ダムカレーをご存知ですか?今、巨大構造物のダム観光がある種のブームになっています。

ダムカードは、国土交通省と独立行政法人水資源機構が管理するダムで平成19年に始められた、ダムを訪問した方に配布しているカードです。カードの大きさや掲載する情報項目などは、全国で統一したものになっていて、表面はダムの写真、裏面はダムの形式や貯水池の容量・ダムを建設したときの技術、といった基本的な情報からちょっとマニアックな情報が凝縮して載せられています。ダムに行かないと入手できないため、スタンプラリーや御朱印集めのように収集マニアの心を揺さぶり、ダムを見学する人が急激に増えた一因とされています。全国のダムカード配布場所は、国交省のページに掲載されていますが、4月末現在668ダム(予定含む)で配布されています。

そしてダムカレー。初めて聞いた方もあると思います。ダムをモチーフにしたカレーで、ご飯で堰堤、カレールーで貯水池を表しています。主にダムの近隣のレストランで提供され、重力式、アーチ式などの種類があります。素材は普通のカレーですが、黒部ダムカレーのようにご当地ダムの名前がつけられています。こちらもマニアの間ではブームになっていて全国ダムカレーの一覧リストも作成されており、昨年はダムカレーのガチャガチャまで登場しました。

これらを反映して、4月には旅行書として「地球の歩き方JAPAN ダムの歩き方 全国版~はじめてのダム旅入門ガイド」も発行され、テレビなどでも「ダムへ行こう!」という番組をよく目にするようになりました。

ところで、そんなダムブームの裏で3月27日、熊本県で国内初となる荒瀬ダムの撤去工事が終了しました。荒瀬ダムは、戦後復興の電力不足を補う目的で、1953年に着工し1955年に竣工したダムです。湛水面積は123ha、総貯水容量は1013万7000㎥で、ダム建設当時は県内の電力需要のうち16%を補っていました。しかし、撤去が決定された頃には1%まで減っていて、逆に維持管理費用の負担が県の財政を圧迫するようになりました。また、ダムが建設された球磨川は鮎が遡上する清流でしたが、近年はアオコの発生や貯水池のヘドロ堆積などの環境悪化が確認されて、かつての清流を取り戻したいという近隣住民の要望も膨れ上がっていました。そのような背景を受けて、2010年にモデル事業として撤去総額約50億円の予算で国内初のコンクリートダムの撤去が決定されました。

ダム巡りのガイドブックとダムカード ダムカレー 荒瀬ダムの撤去工事

ダムの撤去工事は河川内で実施されるため、現在生息している生物や下流への環境影響も小さくありません。鮎の生息育成に配慮し、渇水期にあたる11〜2月の冬場の4ヶ月間だけ撤去工事を実施、工事期間中の環境モニタリングを実施し、治水や環境へのダム撤去による影響を確認していくとともに、各種専門家で構成される荒瀬ダム撤去フォローアップ専門委員会における助言などを踏まえながら工事は進められました。

ダム上流に堆積した土砂も下流に流れて再堆積しないようにする必要があります。土砂・礫石は、ダム湖に堆積している70万㎥中、10万㎥を除去し、残りは自然流下で状況を観察、シルトは粒子が細かく岩や礫石に付着しているコケ・藻に絡まり、コケを主食とする鮎にも大きな影響が出ると判断され、ダム撤去開始までに全量が除去されました。工事で影響を大きく受ける底生動物(モノアライガイなど)は別の場所へ移殖し、工事に伴うコンクリート殻の廃棄物は発電に使用していた導水トンネルの埋戻しに活用して処分量を抑えました。

こうした多くの環境配慮の元で工事は進められ、川の流水が復活したことで、工事後半には水質の改善や、鮎のエサとなるコケや藻、他生物についても増えつつある状況が確認されています。工事完了後も2年間は環境モニタリングは続けられていく方針です。ダムブームと言われる一方で、撤去という初めての決断の結果による河川生態系再生の推移に今後も目を離せません。

(荒瀬ダム環境モニタリングの報告等)