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 東京都下水道局、スマートエネルギー都市への貢献を目指して(2017.11.30)

『再生可能エネルギー・水・省エネ』

東京都下水道局、スマートエネルギー都市への貢献を目指して

下水道は、私たちが安全で快適な生活を営むうえで、大切な役割を担っています。東京都下水道局のウェブサイトでは、その仕組みについて、主に「下水を集めて流す下水道管」「下水道管が深くなりすぎないように途中で下水をくみ上げるポンプ所」「下水を処理してきれいな水によみがえらせる水再生センター」の3つの施設から成っている、と説明しています。
家庭や工場から出た汚れた水は、下水道管を通して集められ、きれいな水に再生されて海や川に流されます。人工構造物の多い都市では雨水の逃げ場がないため、浸水を防ぐための施設としても下水道が活躍しています。
こうした下水道の施設を稼動させるためには、多くのエネルギーが必要です。それは、多くの温室効果ガスが排出されていることを意味しています。東京都下水道局では、快適な地球環境を次世代に引き継ぐため、2004年に下水道事業における地球温暖化防止計画「アースプラン2004」を策定するなど、温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みを進めています。
しかし一方で、下水道施設の機能にはまだ改善の余地があり、改善後の施設では、より多くのエネルギーが使われることになります。東京都下水道局は2017年3月10日、施設改善を実現させつつ、温室効果ガスの排出量を削減させる「アースプラン2017」を発表しました。今月号のニュースレターでは、「世界をリードするスマートエネルギー都市」の実現を目指す、東京都下水道局の取り組みをご紹介します。


レイボーハート

削減実績と新たな目標

東京都下水道局では、これまでも期間を定めた計画を策定しながら、段階的に温室効果ガスの排出量を削減してきました。
2000年度には106.5万トン-CO2に達していた排出量ですが、京都議定書の発効に先駆けて2004年9月に削減計画を策定。2009年度の排出量を93.8万トン-CO2まで削減し、1990年度比で6%削減という目標を達成しました。
その後、2020年度に2000年度比で25%削減(削減後の排出量:79.8万トン-CO2)という目標を掲げて削減を継続。2016年度の排出量が79.6万トン-CO2と、削減量の水準は2020年度を待たずに目標に到達しました。

下水道施設では、主に汚泥処理工程と水処理工程で温室効果ガスが排出されます。2010年度以降の取り組みでは、汚泥処理工程での排出を大幅に削減することに成功しました。一方で水処理工程での削減はあまり進んでおらず、全排出量の約56%が水処理工程からのCO2やN2Oとなっています。汚泥処理工程での継続的な取り組みに加え、水処理工程での効果的な取り組みが課題です。
こうして更なる改善点を明らかにしながら着々と温室効果ガス排出量の削減を進める中、世界では2015年12月にCOP21で「パリ協定」が採択されました。これを受け東京都では2016年3月、世界一の環境先進都市の実現を目指す「東京都環境基本計画」を策定しています。

下水道局では、東京都の方針を踏まえて具体的な対策を検討。下水道機能を高める施設改善をしながら2030年度までに2000年度比30%以上削減という、一段高い目標を実現させるための「アースプラン2017」を2017年3月に策定しました。

アースプラン2017概要

「アースプラン2017」では、3つの基本方針に則り、削減対策を実施していきます。

  1. エネルギー基本計画である「スマートプラン」との両立を図りながら、それぞれの目標達成に向けた取り組みを効率的に推進する
  2. 温室効果ガス削減効果をより一層高めるために、省エネルギーや再生可能エネルギー活用が可能な最新技術を開発し、先導的に導入する
  3. 浸水対策や合流式下水道の改善等の取り組みによる温室効果ガス排出量の増加を見込んで、より一層の排出量削減を図る

削減目標については、2段階で達成していく計画になっています。まずは、2020年度までに2000年度比25%以上の削減が目標です。すでに2016年度の温室効果ガス排出量で、2000年度比25%削減を達成していますが、今後の施設改善により排出量増加が見込まれています。これを相殺する削減を実現することが、目標として設定されました。最終的には、2030年度までに2000年度比で30%以上削減を目標としています。

では、具体的にはどうやって削減目標を達成するのでしょうか? 対策を実施するにあたって、6つの取組方針が示されています。

  • (1)徹底した省エネルギー
  • (2)処理工程・方法の効率化
  • (3)再生可能エネルギーの活用
  • (4)技術開発
  • (5)協働の取り組み
  • (6)顧客との連携

これらの方針に沿って、25項目の具体的かつ効果的な削減対策を抽出。対策実施により、2016年度比で2020年度に1.9万トン-CO2、2030年度には9.6万トン-CO2の削減を見込んでいます。施設改善による排出量増加分を差し引くと、2020年度は2016年度と同等、2030年度は2016年度比5.3万トン-CO2の削減となり、共に目標を達成する値となります。

温室効果ガス削減対策

ここでは、温室効果ガス削減のための具体的な対策例を4つご紹介します。

【微細気泡散気装置の導入】
水処理工程では、下水が送り込まれる反応層内の微生物が汚れを分解することで水がきれいになるのですが、この微生物が活発に活動できるよう、送風機から酸素を送り込んでいます。微細気泡散気装置を用いると従来よりも小さな気泡を発生させることができ、反応層内の下水中に酸素が溶けやすくなるため、必要な送風量を抑えられます。これにより、水処理工程全体で使用される電力の4割を占める反応層への送風電力を、約2割削減することができます。

【汚泥の超低含水率化】
現状でも汚泥の含水率を下げることで、汚泥自体が燃焼しやすくなり、焼却時の補助燃料使用量を削減することができています。今回、脱水機の改良により超低含水率化(74%以下)することで、補助燃料が不要になるとともに、廃熱エネルギーを効率的に回収して発電することにより、焼却炉自体で必要な電気を自給することに加え、他の水処理施設や汚泥処理施設にも電気を供給することが可能になります。

【広域的な運用による焼却炉の効率化】
少ない量の汚泥を処理すると、エネルギー効率が低くなってしまいます。そこで、複数のセンター間で汚泥を適切に配分することで効率を最大化し、電力や補助燃料等の使用量を削減します。キーステーションを定め、複数センター間の送泥量を調整し、平常時の効率的な運転と非常時のバックアップ機能を担うための汚泥処理施設を設置します。

【施設全体でのエネルギー管理
例えば、水処理施設で発生する汚泥の持つエネルギーを増やすことで、汚泥処理施設での保持燃料等を削減することができます。水処理、汚泥処理それぞれでの効率化に加え、施設全体としてのエネルギー削減を可能にする運転の工夫や技術開発を推進します。


下水道の大きな役割は、私たちが出す排水を、環境に影響の無い形で自然に戻すことにあります。また、気候変動の影響を受け、浸水対策としての役割も大きくなってきています。その役割をきちんと果たしつつ、いかに自らが排出する温室効果ガスを削減していくのか。状況によっては、対策の見直しが必要になることも考えられますが、臨機応変に対応することで目標を達成し、「世界をリードするスマートエネルギー都市」の実現につながっていくことを期待します。

スタッフライター 田辺伸広

出典:スマートジャパン(http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/)

プラットフォーム、ジャパン・フォー・サステナビリティ(JFS)より
(https://www.japanfs.org/ja/news/archives/news_id035939.html)