みなさま、こんにちは。コロナ禍の中で突然のテレワーク導入、さまざまな自粛要請、生活の大きな変化をお過ごしのことと思います。
日々、いいニュースが少なく、先行き不安になる話題が多いですね。
不安を持て余していないでしょうか?
この先の世の中が見えにくい中では、自分が何をしたら良いのか、なかなか見通せないものです。その中で、不安が加速度的に膨らんでいる方もおいでかもしれません。また、今は不安になっていなくても、この先なにが起こるかわからない中で不安を持て余すこともあるかもしれません。
今日はそんな場合に役立つ「心理科学」をご紹介しようと思います。
心理学ではなく、心理科学!
「心理科学」と言われると、「え、心理学ではなく心理科学?」、「心理学って文系なので科学じゃないじゃないの?」、「答えのない文学の世界では?」と思われる方もいらっしゃるでしょうか。当然の疑問だと思います。日本では多くの大学で「文学部」に心理学科があるのですから。
ただ、実は「文学」ではないのです。心理学は「心と行動の一般法則を追求する」ことを目指した「科学」なのです。
よく誤解されるのは「アドラー心理学」「ユング心理学」のような思想家の思想体系も「心理学」と呼ばれています。これらは文学だと私も思います。
ですが、本当の心理学は上記のような目的で、リサーチや実験を積み重ねる科学なのです。近年では脳科学や遺伝行動学との融合も進んでより科学的に発展しています。なので、近年は「心理科学」と呼ぶ研究者が増えてきました。
不安の方程式
心と行動の一般法則を追求するわけなので、その成果は関数で表すことが可能です。すでにいくつかの成果が広く使われています。私のカウンセリングやコンサルティングでも心理科学的な方程式に基づいた最適解を助言・提案しています。
ここでは、不安との付き合い方を考えるために、不安の方程式をご紹介しましょう。不安は身を守るために獲得した「恐怖」から発展した心理現象です。「リスクに備えるアイドリング状態」と思っていただければと思います。
不安の強さは下のように「最強最悪な事態」についての解釈の関数として分数で表されます。
分数なので、分母である「手立ての有効性」が小さくなるとどんどん膨らみます。仮に有効性が「0」になったら「∞(無限大)」になるのです。
不安が無限大になると…
不安は身を守るためのものですが、心はバランスが重要です。不安が高まりすぎると、情報処理が偏ってしまいます。脳が不安を高める情報ばかり集めるようになり、うつ病に陥るリスクが高まります。実は私はうつ病の研究者だったので、うつ病予防のためにこの方程式で不安を緩和してもらう啓発活動を始めた次第です。
方程式による不安のコントロール
この方程式に従えば、不安のコントロールを考えやすくなります。たとえば、「手立ての有効性」が「0」の時には「本当になる可能性」を「0」まで下げることで私たちは不安から開放されます。今(2020年5月)のコロナ感染予防として行われている「StayHome」運動は、このことを狙ったものと言えます。
コロナ感染も心配ですが、次に不安なのは経済の問題ですね。社会の構造が変わると言われていますが、どう変わるのか、どこまで変わるのか、まだ予想が出尽くしていません。その中で「手立て」を見失うと不安が「∞(無限大)」になりかねません。
大事なことは最強最悪の正体を見極めて、その時に自分に何が出来るか見失わないことです。そうすれば、私たちは不安をコントロールすることができます。
不安との良い付き合い方を!
不安は敵ではありません。私たちが身を守るために獲得した心の大事な機能です。上手に付き合えば、私たちに希望を与えてくれます。
カウンセリングではお一人お一人のご事情の中で、この方程式によるアセスメントでご一緒に不安を減らせるキャリア形成のアクションプランを考えたりしています。ですが、方程式を理解できたあなたならご自分でアセスメントして考えることも出来るでしょう。必要があれば、いつでも私たち心理科学者もお手伝いできます。どうぞ、あなたにとって最適な不安との付き合い方を見つけて下さい。
著者プロフィール:
杉山崇
(キャリア心理科学者)
神奈川大学教授。
教育支援センター副所長、心理相談センター所長などを歴任。精神科、教育委員会、公的雇用支援機関などの心理職、厚生労働省事業の委員なども務め、企業人事施策のコンサルティングも。ニュースや学術バラエティなどTV出演も多数でベストセラー著作もある。学習院大大学院修了。