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特集コラム
~サステイナビリティとキャリア~

国際機関で働くということ

キャリア 国内・国際 注目・話題

国際機関で働く人が国際派・頭脳明晰・高給取りと、憧れの職業であったのも今は昔となりました。国際線の飛行機からアタッシュケースを下げて降りてくるより、埃にまみれたランドクルーザーから両手を挙げて降りてくるイメージの方が強くなったのかもしれませんね。
それでも、人として生を受けたからには、貧しい国の人々に感謝される仕事をしたくはないですか?歴史に残る仕事、地図に載る仕事はいかがですか?

国連機関とは

ご存じのとおり、国連機関には国際連合を構成する主要機関と補助機関の他、連携する機関、専門機関があります。詳細は国連広報センターのHP(※1)でご覧ください。

国連機関職員の募集について

国連機関でのリクルートの方法は各機関によって多少の違いはありますが、大まかに言うと次のとおりです:

ジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)

日本政府の費用負担で若手日本人を国際機関に2年間派遣する制度

ヤング・プロフェッショナル・プログラム(YPP)

国際機関が年に一度、若い専門職員を雇用する制度

中途採用

各機関の職員に空席が生じた際に募集が行われる

外務省の中にある国際機関人事センター(※2)が詳細な情報を提供しています。英語と修士号が必要とあります。雇用が保証されている最初の2年間が経過すると、次の仕事を自分で探さなければならないことにご注意ください。

国際機関が求める人材

日本政府が国際機関に送り出したい人材と国際機関が求める人材は違います。募集条件と採用のためのチェックポイントが違うことは国際機関も一般企業も同じです。募集条件やチェックポイントは軽々クリアし、更に採用されるためのアピールに備えましょう。
まず語学です。英語はできて当たり前、フランス語かスペイン語もある程度理解できる必要があります。担当したい国や地域での日常会話も重要です。
言葉だけ解ればいい訳ではもちろんなくて、自分が専門とする分野での修士できれば博士号および職務経験が必要です。

採用されたい職種にコネクションがある人が有利です。日頃からご自分の専門分野に関する報告書に目を通し、著者の目に留まるコメントを送っておきましょう。

政府が国際機関に人材を送り出したい理由

日本人職員を国際機関に送り出せば国際舞台での日本の発言権が強まるから、外務省内に国際機関人事センターを設置しているのです。

国際機関に日本人が少ない理由

日本政府は国際機関に職員を送り込むために多額のお金をつぎ込んでいます。これはと期待する大学院生に奨学金を出したり、非正規のコンサルタントとして送り込んで正社員化を図ったり、しかし苦労の末に送り込んだ日本人職員の多くは、当初の契約期間が終わると次のポジションを自ら確保することができずに職場を去ってしまいます。

私は国連の連携機関の一つである世界銀行東京事務所で、6年間、米国ワシントンにある世界銀行本部で働く日本人職員の採用を担当しました。関連する機関や大学に採用をアピールし、応募希望者からの質問に答え、応募書類のスクリーニングをし、面接のアレンジまでが担当者がお手伝いできる範囲です。後は担当部長の判断です。
日本の出資割合に対して日本人職員の数が少ないことは世界銀行も例に漏れず、この6年間は、とても辛い6年間でした。
世界銀行は開発途上国の経済開発支援を行うため、途上国の開発に係わる日本国内の人たちとも日頃から交流があります。その人脈を通してリクルート活動も行われるのですが、どうあがいても職員数は増えませんでした。

最終面接で合格する応募者は、面接のためにドアを開けて入ってくる時点で大体判ります。勝ち残る人は「ただいま」とでも言うような表情で入ってきます。しかし、多くの日本人はオドオドとした様子でドアを開けます。弱点を突かれるのが怖いと恐れているかのようです。日本の一流大学を卒業し、一流企業に就職したエリートばかりなのに、採用されるのはごく僅か、しかも彼らは3年経つといなくなってしまうのです。
国際機関の面接のドアを、ワクワクした顔で入ってくるか、オドオドしながら入ってくるか、その違いは、ドアの内側で自分が何をすべきか解っているかどうかです。

国際機関職員として生き抜くための資質

国際機関であっても、日本企業であっても、仕事は変わりません。強いて言うなら使用言語が外国語か母国語かの違いだけです。ではなぜ、日本のエリートたちは恐れるのでしょうか?

途上国から世銀に応募してくる人たちは、中学校以来、英語で授業を受けているので専門分野について英語で議論することに抵抗はありません。しかし日本では母国語で授業を受けます。その強みは、授業の内容を真に理解できることにあります。私たちは小学校から理科の実験に実物を使ってきました。三角定規も買ってもらえなかった人たちに劣っているはずはありません。
一方、日本では自営業でもない限り、親の職場に出入りしながら育った人は多くありません。親の職場の人たちと飲食を共にすることも滅多にありません。ましてや外国語です。ましてや異文化です。経験の少ない土俵で、ルールもわからない相撲を取ろうとしているのです。どうして堂々と自分の専門分野での成果や主張を繰り広げられるでしょう。

あなたがドアの内側ですべきことは、途上国の人々が困っている状況についてもっと調べたいと言い、解決の方法に仮説を立てるだけの知識があることを示し、事業実施の能力を磨くことです。語学など、最低限の単語さえ覚えていれば文法は担当者が修正してくれます。難解な専門書がズラリと並んでいますが、興味のある専門分野なら読めるはずです。見知らぬ国の文化など理解できなくて当然、解ろう、話し合おうとする姿勢が求められているのです。
国連機関とは、日夜あらゆる武器を使って陣取り合戦が繰り広げられているようなものです。語学や専門知識や度胸をどう使って勝ち進むか。その覚悟ができているか否かです。でもそれは日本国内の企業でも同じですね。
異文化を受け入れて楽しむことができれば、世界はもうあなたのものです。
がんばってください。

記事掲載日:2020年7月6日

著者プロフィール:
小久保 和代
(こくぼ かずよ)

女子栄養大学中退後、米国ボストン市キャサリン・ギブス校卒、早稲田大学社会科学部卒、法政大学人文科学研究科修士課程修了。
法律特許事務所、国際機関東京事務所勤務を経て開発途上国の政府開発援助に携わる。社会福祉士、キャリアコンサルタント。