私は環境経営というものに、1995年頃より関わってきています。なぜそう言い切れるかというと、ISO14001規格が発行される前に、あるISO認証機関の設立を目指していた団体に加わって欧州視察に同行、その直後からコンサルタントとして、さまざまなお客さま企業から報酬をいただきつつ環境マネジメントに関するコンサルタントを生業としてきたことから、25年という関与の長さに誇大広告は全くありません。
大企業、グローバル企業、よく環境経営の先進企業として取り上げられるような企業を支援してきました。その私が感覚として体感しているのが、次のことです。
経営レベルでの、本気度の高い環境経営が始まっている
少し前まで、特に温室効果ガス削減の取り組みは、コスト削減の取り組みの別の角度からの言い換え、といってもいいようなものでした。
エネルギー使用量を減らしてコストを下げようとする、その結果として、温室効果ガスも計算上、削減される。あるいは、従来から実施してきた植林など地域への社会貢献活動を、樹木が温室効果ガスを吸収する側面から、光を当て直して地球温暖化防止に役立っていると言い換える、というようなことばかりでした。
しかし最近、ようやくこういったことに変化が訪れていて、コストが多少増えたとしても、温室効果ガス削減に取り組もうという流れが今、ようやく形成されつつあります。
経営レベルで支援できるコンサルタントが求められている
なぜ、そのような流れになってきたか、は別の機会にまたご紹介することとして、経営が本気で環境経営を推進しようとすると、必要になってくるのが経営レベルのことが分かる環境マネジメントコンサルタントです。
地球環境のことなどをよく知っている、というだけではコンサルタントの力量として圧倒的に不足します。なぜなら、社内の環境推進チームだけでは上役の役員クラスを説得できないから、コンサルタントの力を借りようとされることになるのであって、そこで、社内の環境推進チームより少しは地球環境の変化について詳しい、などといったことで納得する役員などもちろん存在しません。
役員レベルと同じ目線で、若干小難しくいうならば、ガバナンスとはなんたるかを熟知する同じ土俵に乗った上で、環境マネジメントの重要性を説き、彼らの重い腰が上がって環境保全に向かうのを支援できるようでなければ、コンサルタントとは言えません。
遠回りなようで、会計士の資格取得などが役に立つ
私にとって、公認会計士の資格を取得し実際にも会計監査に数年関与したことが、結果として現在の環境マネジメントコンサルタントとしての素地を形成してくれたように思います。
皆さんは意外に思われるかもしれませんが、公認会計士は会計の領域だけに特化した専門性をもって会計上に現れる金額と対峙するのでなく、経営全般の外部からのチェッカーとして機能できなければ、結果としての会計監査をこなすことなどできないのです。ゆえに、企業の経営者とよく対話をすることになります。
私は、公認会計士となり会計監査を始めてから、そもそも理系出身だったこともあり、あるきっかけを経て環境マネジメントコンサルタントを目指しましたが、この業界に私が入って以降、環境マネジメントコンサルタントになりたいがために、そう決心してから後に、公認会計士の資格取得を目指しそれを実現しました、と言い切った方を二人、知っています。
大変に立派な方々であると尊敬しています。
そのような経験に基づくならば、ようするに急がば回れ、企業経営者が相手にしてくれるほどに自らの企業経営に対する見識を深めておくというのは、今後の経営レベルでの本気度を伴う環境経営のコンサルタントとして機能するために、必要なことであるといっていいかもしれません。
著書
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CSRエピソード 幻冬舎(2017/11/14)
著者プロフィール:
福島 隆史
(ふくしま たかし)
公認会計士。
1996年より大手監査法人にて環境経営やCSR全般、検証業務に関わる。
2006年、独立して(株)サステナビリティ会計事務所、2008年にサスティービー・コミュニケーションズ(株)を設立。サステナビリティ・経営財務双方のノウハウを活かし、企業をサポート。
著書「CSRエピソード」(幻冬舎)。