コロナの影響で学校が急に臨時休校になり、多くの学生が学校へ通えなくなったばかりでなく、授業すら受けられずに長期休暇になってしまいました。ところが、カリフォルニアの大学に通っていた私の子供は、キャンパスが閉鎖された翌日からすべてオンライン授業に切り変わっていました。学校に通う必要がなくなったので急きょ3月に帰国し、時差がマイナス16時間あるので夜中から午前中まで授業を受け、試験もオンラインで行い、単位も取れて無事卒業できたのです。
この違いは何だろうと改めて考えてみることにしました。
子供は東京にあるインターナショナルスクールに通っていました。学校の概要を説明しますと、キャンパスが2つあり、メインキャンパスは、5歳から始まるキンダーガーテンが1年間、エレメンタリースクールが5年生までの5年間(Grade1〜5)、ミドルスクールが8年生までの3年間(Grade6〜8)、ハイスクールが12年生までの4年間(Grade9〜12)となっています。日本の6・3・3年制とは少し違う5・3・4年制になります。別のキャンパスにはアーリーラーニングセンターといって3〜5歳の小さい子供たちが通っています。生徒は、アメリカ人や外国人、帰国子女など約50か国の国籍を持つ、1,700人弱の生徒が在籍しています。皆さんの関心は学費だと思いますが、日本の私立大学の2倍以上で、そのほかに施設代やスクールバス代等がかかります。
子供は4年前に高校を卒業しましたが、その当時で9年生からつまり日本でいう中学3年生から一人一台Macのノートパソコン(以下、PC)を購入し、授業を受けていました。今ではキンダーと1年生は学校からiPadが貸与され、2年生からiPadを購入し、6年生からPCを使っているようです。高校生のときに友達がフットボールの試合で骨折したときは、PCを使って病院から授業を受けていました。また、スポーツの試合やボランティア活動などで遠征や海外に行っても、PC持参で空いた時間に宿題や勉強をしていました。宿題はグループワークがあり、各自自宅に居ながらプレゼンテーション資料をみんなで作成していて、コロナで在宅勤務になった今の私と同じようなことを実に8年前からやっていたのです。学校側もそれに対応できるシステムができあがっており、キャンパス内でWi-Fiが使えるのはもちろんのこと、東日本大震災のあとはスクールバスにもWi-Fiが完備され、通学のバスの中でも勉強ができるようになりました。勉強をする上でPCは必須のツールで、PCを使って学習できるように学校や先生が環境を整えることは一日二日ではできないことです。
また、アメリカの大学はMicrosoftのほか、いろいろなPCソフトを提供しています。個人でソフトを購入するのはお金がかかりますが、大学から提供されれば学生のときから使いこなせるので、日本のように社会人になって会社で覚えるのとでは次元が違います。学費が非常に高いのには納得しました。
日本の現状はというと、子供と同時期にアメリカの大学に留学した日本人の友達は、大学でPCが必要と言われ買うかどうか悩んでいました。真っ先に携帯電話は購入したのに、高校でPCを使っていなかったのでその必要性が感じられなかったのでしょう。また、大学生はオンライン授業や宿題を提出するためにPCを購入したけれども、これまで使ったこともなかったのでタイピングが非常に遅くて苦労していると聞きました。日本のアルバイトの求人欄に「ワード・エクセル・パワポが使えるとなおよい」と記載されていることに、子供は疑問を持ったようです。アメリカでは使えることがあまりにも当たり前すぎて、そのようなことは聞かれもしないそうです。スマートフォンでメールも使える、検索もできるかもしれないけれども、PCを使うこととは大きな隔たりがあるのです。
3月1日時点でのオンライン授業の実施状況を以下のグラフに示します。急だったにせよ、高校生の9割はオンラインで授業が受けられていなかったようです。
今回のコロナで、日本はさまざまなことにデジタル化が諸外国より遅れているということに気付かされたのではないでしょうか?これは子供たちだけではなく、日本国民みんなで底上げをしていかなければならないと危機感を覚えました。新設されたデジタル庁に期待したいと思います。
図1 遠隔教育の実施状況(令和2年3月1日現在)
注)ここでいう「遠隔教育」とは「遠隔システム」を活用した同時双方向で行う教育をいう。
出所)文部科学省「学校における教育の情報化の実態等に関する調査/令和元年度 調査結果(速報値)」(※1)より作成
最後に、記載したことは日本にあるアメリカンスクールという特殊な学校で、アメリカの学校がすべてこのようではないことをお断りしておきます。
著者プロフィール:
亀本 裕子
(かめもと ゆうこ)
岩手県立一関第一高等学校 理数科 卒。法政大学 工学部 建築学科 卒。
設計事務所に勤めた後、結婚を機に夫の赴任先であるアメリカに滞在、帰国後、シンクタンクで働いている。
国土基盤、エネルギー、環境の分野は建築とはそう遠からず。
一児の母であり、建築家の妻でもある。