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特集コラム
~サステナビリティとキャリア~

有報へのESG情報掲載が普通になってくると…

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有価証券報告書とは何か

タイトルでは有報と省略しましたが、発音はUFO。しかし未確認飛行物体のことではなく有価証券報告書の略です。
では有価証券報告書とは何かといえば、詳細な定義はともかくも、上場企業であれば決算日以降3カ月以内に公開している報告書のことです。
その報告書構成は、企業の概況/事業の状況/設備の状況/提出会社の状況/経理の状況/監査報告書などと厳格に定められた構成となっており、企業間比較を容易にしています。

そして最も重要なポイントは、有報が金融商品取引法で規定された報告書であるということです。
ようするに法定開示書類なのです。

今、ESG情報開示の主要媒体は何か

現時点において企業がESG情報をどこで開示しているかといえば、CSRレポート、サステナビリティレポート、統合レポート、アニュアルレポート、データブックなどとなっています。
あるいはwebに直接書き込んでいる企業もありますね。

さまざまなレポートタイトルを並べましたが、要するにこれらは全て、日本において任意開示のレポートという点で共通しています。
任意開示レポートですから、少々粗っぽい発言をご容赦いただくならば、開示してもしなくても、記載してもしなくても、はたまた多少数値や記述内容が間違っていたところで・・・許されるような基盤上での開示となっているのが実際です。

有価証券報告書へのESG掲載に進もうとしている

有報、すなわち法定開示書類にESG情報開示が要請されていく方向で世界は進んでいます。
国際会計基準審議会を統括するIFRS財団に、サステナビリティ基準審議会(SSB)が設定される方向であることが、2020年9月に明らかとなりました。
国際会計基準を策定している団体として、ESG情報の開示基準についても開始するとの意思表示と捉えてよいと思います。

そしてIFRSのSSBが開示基準を設定するならば、その開示媒体前提は法定開示書類である、日本では有報になると考えてよいと思います。
時期を同じくして日本の金融庁は2020年11月「記述情報の開示の好事例集2020」(※1)と題して、新型コロナウイルス感染症とともにESGに関する好事例集をまとめ公表しました。各上場企業は好事例集を確認しつつ、有報にESG情報を掲載していくよう金融庁としても促しているかのようです。

ESG情報に求められる要件の高度化

有報、すなわち法定開示書類にESG情報開示が要請されると、その開示内容に要求される厳しさのステージが急に跳ね上がることは想像に難くありません。
集計精度の問題のみならず、現在、財務情報が連結を範囲としている一方で、ESG情報は単体や、一部グループの限定となっている場合が殆どです。

このような状況は、任意開示であるから許されていますが、法定開示資料の中に掲載するデータとしては、大いに不十分との烙印が押されるでしょう。
大きな目標を掲げていたのに全く達成できないといった状況も、任意開示の時点より酷評を生むことにつながるように思います。そもそも有報における虚偽記載は、投資家から訴えを起こされる可能性すらあり得ます。

どんな力量、人材が求められることになるか

企業としては今後、ESG情報を適切に収集し開示する必要性に迫られますから、当然の帰結として、そのようなことをサポートできる力量を持つ人材の獲得、もしくは育成に動くことになるでしょう。

この予想は、ほぼ外れる可能性がないぐらいに確実に訪れる未来ではないでしょうか。企業が推進する社会課題解決に向けた貢献、環境や社会性に関与していきたいと思われている皆さまにおかれては、ESG情報を取扱い、収集や保証などを実施している組織に参加され、そのような力量を磨いておくということも、今後に向けてのひとつの新たな職域選択であるように思います。

記事掲載日:2020年12月23日

著書
著者プロフィール:
福島 隆史
(ふくしま たかし)

公認会計士。
1996年より大手監査法人にて環境経営やCSR全般、検証業務に関わる。
2006年、独立して(株)サステナビリティ会計事務所、2008年にサスティービー・コミュニケーションズ(株)を設立。サステナビリティ・経営財務双方のノウハウを活かし、企業をサポート。
著書「CSRエピソード」(幻冬舎)。