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特集コラム
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電力が足りない!2021年冬季の状況

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2020年年末からコロナの話題を縫うように報道されている「電力不足」、危機的な状況が続けば計画停電もありうる事態のようです。計画停電は3.11の直後に体験し、普段いかに電気の恩恵を受けているのかを実感しました。

今回の電力不足は、急激な寒波到来と火力発電所の原料である液化天然ガス(LNG)の不足が原因とされています。また電力自由化後に進んでいる新電力が年末からの電力価格の高騰による大打撃を受けていると言われています。今回は、ニュースなどの情報を元に今の電力事情についてお伝えしたいと思います。

電力緊迫の状況

電力需要は、10年に1度の寒さを想定して設定されていますが、1月当初よりその予想を上回る需要が各地で起きました。電力使用率(速報値)は、1月12日に関西電力管内で99%、四国電力で98%、東北電力で97%まで上昇しました。電力使用率は、安定(93%以下)、やや厳しい(93~95%)、厳しい(95%以上)、危機的レベル(98%)とされています。ちなみに東京電力の日々の電力使用予想は、こちらのページで閲覧できます。(※1)

この危機的状況に対し、電力広域的運営推進機関からの要請を受けて、全国の発電事業者は需要量に関わらず発電設備を100%稼働して余剰分を不足している地域に融通しています。実際に関西電力は、中部電力や東京電力からの供給を受けて危機を脱しました。

その後はやや落ち着いたものの、まだまだ寒さが続きますし、緊急事態宣言で家庭内の電力消費が上昇していることも含めて暫くは予断を許さない状況です。

電力不足は何故起きたのか?

今回の電力不足の大きな原因とされているのは、火力発電用のLNGの不足です。日本のLNGによる発電は電力全体の38%(2018年)ですが、二酸化炭素発生量が石炭や石油に比較して少ないことから3.11以降の原子力発電の稼働停止以来、依存度が高くなっています。また、そのほとんどが海外からの輸入によるものです。

2020年秋以降、最大の輸入先であるオーストラリアで相次いだ生産施設のトラブルや、新型コロナ対策で通過船に対する安全手順が増えている?パナマ運河でのLNGタンカーの「渋滞」(ここでもコロナ禍)などにより国内への供給量が低下しています。また、コロナ禍により世界的に工業生産業による消費が低下してLNPの生産量を押し下げていたところへ、いち早く経済を復興しつつある中国や台湾の大量買い取りがLNG価格を押し上げて調達を困難にしていることも原因とされています。

需要と供給のバランスによる電力価格の高騰

電力ひっ迫の状況下では、各電力会社の余剰電力が不足している会社に融通されていると前述しましたが、その取引は、一般社団法人 日本卸電力取引所(JEPX)が行っています。その取引価格が今月歴史的な暴騰となりました。図1にJEPXの直近の取引価格を示します。卸電力取引には予測される需要量による一日前市場(スポット市場)とその後の需要増による調整としての当日市場(時間前市場)があり、電力ひっ迫の状況は当日市場のほうがより顕著に表れ、市場価格の差が大きいほどその日の電力需要が大きかったことを示します。

2020年12月中旬までは卸価格は安定していて約5~8円/kWhで推移していましたが、その後は約180円/kWhまで上昇しています。

図1 電力卸価格の推移

(※2)JEPX: スポット市場取引結果、時間前市場取引結果より作成

卸価格は、1日を30分ずつに区切り、売り札と買い札を価格と量に応じて積み上げて需要曲線と供給曲線が交わる均衡点により決定し、全員がこの約定価格で取引をしますので、全国一律です。

図2 JEPX取引での卸約定価格の決定方法

(※3)JEPX:日本卸電力取引所取引ガイドより

また、多くの小売電気事業者が、JEPXでの売り札不足で自社需要分の電力を調達できず、一般送配電事業者からインバランスとして補給を受けている事情があり、経済産業省は2021年1月15日に、卸電力市場価格の高騰に対応するために「インバランス上限を200円/kWh」にする特別措置を発表しました。

「インバランス」とは
新発電会社が計画と実績の同時同量を達成できずに供給する電力の過不足が発生した場合、その調整のための対価として支払わなければならない料金のことです。インバランス料金には新電力会社が同時同量を守らなかった際の罰則の意味があります。つまり、事業者に対して販売と発電を一致させるという努力を促すことができ、電力の安定供給につながります。

(※4)新電力ネット用語集

そして、この卸価格の高騰は我々消費者に電力料金の値上げという形で跳ね返ってくる可能性があります。特に、電力自由化より市場が拡大している新電力では「市場連動プラン」を電気料金として設定している会社もあり、市場価格の高騰はそのまま家庭での電気料金を直撃します。電気の契約について改めて確認・検討が必要かもしれません。

同時に、資源エネルギー庁の省エネのサイトなどを参考にして、家庭や職場での省エネルギーも進めていきたいですね。(※5)

記事掲載日:2021年1月27日

著者プロフィール:
中村 恭子
(なかむら きょうこ)

早稲田大学 理工学部応用化学科卒
大手建設コンサルタントで、河川、湖沼の水質保全、環境アセスメント等の業務を約25年間担当。
技術士(環境部門、情報工学部門)、公害防止管理者(水質第一種)