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特集コラム
~サステイナビリティとキャリア~

好きこそものの上手なれの時代へ

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スタートダッシュにつまずいた?

新しい1年が始まって早一月、突然の緊急事態宣言でみなさまの2021年のスタートダッシュも何らかの影響を受けたのではないでしょうか?

私もその一人です。人との交流でエネルギーを貰うタイプの私は、コロナ禍が収束していたら多くの充電チャンスがあるはずでした。しかし、地方では首都圏のイメージが悪い状況です。非常に残念なこととなりました。

働き方改革は時短ではなく、労働の価値創出なり!

しかし、私の些末なスタートダッシュのつまずきとは関係なく、昨年からスタートダッシュの勢いが止まらない現象があります。それは、本当の意味での「働き方改革」です。

働き方改革というと企業の労働時間短縮の問題というイメージが強いかと思います。ただ、本当の働き方改革とは「生産性の向上」を目指したものです。これまで、日本人には「もったいない」の精神があったにも関わらず、「個人の時間」にはこの精神は適用されていませんでした。勤労時間の心理的な充実度…、私はこれにも価値を見出す科学者の一人ですが、日本の企業はここが弱かったように思えます。

たとえば、誰よりも早く出勤して、誰よりも遅く帰宅する人が偉い…こんな組織に過剰にコミットした「滅私奉公」を尊ぶ雰囲気が昭和の日本にはありました。この雰囲気は平成でも受け継がれていたかもしれません。そして、このことが日本の長時間労働を生んでいました。「働き方改革」が労働時間の短縮から始まったのも、ある意味で正しいことだったと言えるでしょう。
しかし、本当の働き方改革はこれではありません。今、テレワークの導入など2019年までの働き方はどんどん崩れつつあります。ここでは、私達の働き方はこれからどのように変わってゆくべきなのか考えてみましょう。

人は「がまんして続けろ!」では動けない…

突然ですが、「石の上にも三年」や「一所懸命」という言葉をご存知でしょうか?最近はあまり耳にしないような気がしますが、「石の上にも三年」とは「冷たい石でも三年も座りつづけていれば暖まってくる」、つまり「がまん強く辛抱すれば必ず成功する」という意味で使われていました。「一所懸命」は、武士が領土を命がけで護ることから広がって、一つの物事を命がけで貫くことを表しています。

いずれにしても、「がまんして、一つのことを続けろ」という教訓です。昭和でも平成でも、働き方の一つの価値観だったと言えるでしょう。特に日本人は生産力のあるコミュニティ(ムラ社会やカイシャなど)に献身的に貢献することがスタンダートな生き方であり続けました。これは500年以上も続いたと言われています。その中で一つのことを貫くために自分の主体性を殺すような「滅私奉公」は長く日本人の美徳であり続けたのです。

滅私奉公はいらない?

しかし、今の時代はどうでしょうか?企業は滅私奉公を求めているでしょうか?滅私奉公をしていただくのであれば、その分、生活の保障が必要になります。昭和では当たり前だった従業員とその家族の生活保障が競争の激しいグローバルなビジネス環境では企業の負担になります。2000年代前半、この負担を減らすための非正規雇用拡大をめぐる政策議論も行われ、報道もかなり大きくされていました。

実際、「副業禁止」など滅私奉公の典型のように思われていた職業でも、それを求めない働き方が推奨されはじめました。例えば、公務員は非正規雇用化やアウトソーシング化が進み、正規雇用であっても利益相反がなければ副業は認められるケースがあります。「銀行マン」でも、たとえばみずほ銀行が「週3日勤務、給与6割」を打ち出し、副業も可能としています。このような「滅私奉公を求めない」働き方は今後も加速度的に拡大していくことでしょう。

滅私奉公を求めない、しない

また、滅私奉公は個人にも負担が大きいものです。自分のやりたいことや好きなことを諦めることになるのですから、滅私奉公においては個人の自己実現など有りえません。企業も滅私奉公を求めない、個人も滅私奉公をしない…今後はこのような企業と個人の関係が、双方とも幸せな「win-win」の関係として定着していくことでしょう。どうやら、「滅私奉公」は働き方の価値観としての役割を終え、「石の上にも三年」や「一所懸命」もかつて程の影響力がなくなる時代へと向かっているようです。

「好きこそものの上手なれ」で幸せに!

では、私達はこれから何を頼りに仕事について考えていけば良いのでしょうか?それは「好きこそものの上手なれ」です(杉山ら,2018)。(※1)
好きなことであれば「がまん」せずにがんばれます。好きであれば、仕事を通して毎日ワクワクできます。仕事が「あなた個人の時間」になります。さらに、自己実現できます。幸せにもなれます。

そのためには、共感できるビジネスモデルと自分の特性が評価される文化、そして仲間(企業風土)に恵まれることが重要ですが、これからの働き方は大企業への「滅私奉公」や「石の上にも…」、「一所懸命」などを基軸に考える必要はなさそうです。
「好きこそものの上手なれ」これを新機軸に、あなたのこれからの働き方を考えて下さい。これぞ、本当の働き方改革です。あなたによる、あなたのための、あなただけの働き方改革、2021年がそういう一年になるといいですね。

記事掲載日:2021年1月28日

著者プロフィール:
杉山崇
(キャリア心理科学者)

神奈川大学教授。
教育支援センター副所長、心理相談センター所長などを歴任。精神科、教育委員会、公的雇用支援機関などの心理職、厚生労働省事業の委員なども務め、企業人事施策のコンサルティングも。ニュースや学術バラエティなどTV出演も多数でベストセラー著作もある。学習院大大学院修了。