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特集コラム

再生可能エネルギーを促進するために

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Apple社からの要求

アメリカのAppleが取引先企業に対し、2030年までに使用する電力をすべて再生可能エネルギーにするよう求めているというニュースを見ました。この取組に参加することを表明した日本の企業は、自社の取組状況を考えると、目標達成にはかなりの投資が必要なことを述べていました。

日本では、政府が掲げた2050年までにカーボンニュートラルにするという目標に向けて進んでいますが、突如として海外から早期の実現を迫られたのです。
(Appleは、去年の7月に「Appleは本日、事業全体、製造サプライチェーン、製品ライフサイクルのすべてを通じて、2030年までに気候への影響をネットゼロにすることを目指します。」(※1)と発表し、今年の3月には「Appleは本日、当社の世界中の製造パートナー110社以上が、Apple製品の製造に使用する電力を100パーセント再生可能エネルギーに振り替えていくことを発表しました。」(※2)というプレスリリースを出しました。)

2019年度時点で、日本における再生可能エネルギーによる発電量は全体の2割にも達していません。そのような中、Appleへのサプライヤーは再エネ電力100%に、あと9年で実現しなければならないということです。

図1 2019年度の電源構成割合(発電量)

出所)資源エネルギー庁「総合エネルギー統計(時系列表)」より筆者作成(※3)

カーボンニュートラルの世界

ここで今一度、言葉の整理をしてみます。

図2 用語の整理

カーボンニュートラルを実現するために、温室効果ガスの排出を減らす必要があり、そのためには温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーの導入が不可欠ということです(SDGsにおいては、地球環境や気候変動など地球規模で取組むべき環境アジェンダとして、ゴールやターゲットが設定されています)。

図3 2050カーボンニュートラルに向けての温室効果ガスの排出量と吸収・除去量の関係

(エコリクのコラム「目指せ!カーボンニュートラルの世界」図2再掲)
出所)資源エネルギー庁「「カーボンニュートラル」って何ですか?(前編)~いつ、誰が実現するの?」(※4)

カーボンニュートラルの世界や生活とは果たしてどのようなものでしょう。
Appleは去年の7月の段階でグローバルな企業運営において既にカーボンニュートラルを達成し、今後も100%再生可能エネルギーで企業運営を継続するとしています。Appleが既にカーボンニュートラル像を示しているのです。

ドラマチックな取組を!

カーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギーの活用を迅速に拡大するためには、何かもっと大胆な方法で取組まなければなりません。
短期間で普及を急激に増やさなければならない状況は、新型コロナワクチンの接種率を上げるのと同じだと思いました。アメリカでは、身近な薬局で薬剤師による注射を行うなど柔軟な対応や、ワクチン接種者に高額宝くじ券を贈るなど滑稽に思える作戦は、ワクチン接種を促進するために手段を選ばない方法かもしれません。しかし、結果を出すための近道だったと思います。

そこで、子供がアメリカン・スクールに通っていたときにあまりにも合理的で感動したことをご紹介します。
小学校の時間割が登校する週5日分ではなく、1日多い6日分だったのです。A DayからF Dayまであり、曜日に関係なくアルファベット順に時間割がずれていきます。月曜がA Dayなら金曜はE Dayになり、次の月曜がF Day、火曜がA Dayとなります。混乱するかと思いきや、間違えることもありませんでした。
一方、日本の公立の学校では、私も経験したことですが、休みが多い曜日の授業数が学期末で足りなくなりました。それに比べると、思いもよらないなんとも効率のいい時間割でした。

余談ですが、公立の学校で毎日同じ時間に子供が帰宅しないのは不便でした。水曜は午前のみ、先生が午後に会議があると短縮授業になり、終業時間が普段と違いました。アメリカン・スクールでは、毎日、始業と終業時間は同じで、学校が子供主体と考えると職員会議などで授業に影響することはありませんでした。

これまで当たり前だと思っていたことでも、視点を変えれば効率的で目からうろこ的な方法がきっとあるはずです。

未来のために

Appleに供給している日本のサプライヤーは大変だなあと他人事でした。しかし、私たちも地球に優しい取組を行っている企業を選び、生活を見直すことはできるのです。

6月というのに東京では既に気温が30℃を越えた日があり、やれやれ今年の夏も暑いのかと半分慣れっこになりあきらめ気味ではありました。ふと、過去に自分が落としたごみが、地球一周して大きくなって背後から自分に当たって来たのではないかと思ってしまいました。

記事掲載日:2021年6月16日

著者プロフィール:
亀本 裕子
(かめもと ゆうこ)

岩手県立一関第一高等学校 理数科 卒。法政大学 工学部 建築学科 卒。
設計事務所に勤めた後、結婚を機に夫の赴任先であるアメリカに滞在、帰国後、シンクタンクで働いている。
国土基盤、エネルギー、環境の分野は建築とはそう遠からず。
一児の母であり、建築家の妻でもある。