グリーンジョブ(Green Jobs)とは、働きがいのある、人間らしい仕事であり、環境の保全や回復に貢献する仕事です(注)。
注:グリーンジョブとは、2007年にILO(International Labour Organization:国際労働機関)が定義した仕事で、「エネルギーと原材料の効率改善」「温室効果ガスの排出制限」「廃棄物と汚染を最小限に抑制」「生態系の保護および復元」「気候変動の影響への適応支援」に貢献する。
日本人はランキング好き
株式会社ブランド総合研究所が10月に発表した「都道府県魅力度ランキング」について、住んでいる県や出身県のランキングが気になったと思います。「自治体についてどの程度魅力を感じるか?」という調査で、前年に下位だった県は努力したと想像しますし、上位の県はさらに魅力を増すよう発信したことと思います。結果を見てどう行動するかがミソなのです。
思えば大学も偏差値順にランキングされ、就職時には人気企業のランキングが発表され、ランキングの上位に入れることを望んだ心当たりはありませんか。
都道府県別人口当たりのエネルギー消費量
エネルギーに関して、国の統計表やグラフはよく目にしますが、県ごとの、しかも県民一人当たりのエネルギー消費量を比べたことはなかったので、この機会にグラフにしてみました。国の数値はあまりに大きくて自分ごととは考えられませんが、一人当たりの数値となると身の回りのこととして捉えることができると思います。ただし、エネルギー消費量が多い県が環境への配慮が低いことにはならないので、ランキングにはせず地域順にしました。
図1 都道府県別人口当たりエネルギー消費量(2018年度)
出所)資源エネルギー庁「都道府県別エネルギー消費統計」より筆者作成(※1)
私の出身地である東北は「家庭」のエネルギー消費量が他県に比べて多いです。同じ寒冷地である北海道や北陸地方も多いのは冬の暖房によるエネルギー消費量が大きいからです。
「第三次産業」はやはり東京都が多く、ほかの県はそれほど変わりがありません。
最も大きな違いは「製造業」でした。「家庭」「運輸(家庭)」「第三次産業」の合計はそれほど違いありませんが、「製造業」が多くある県はエネルギー消費量も多くなっています。
エネルギー消費量は少ないにこしたことはありませんが、産業の違いで県の特色と捉えていただきたいのです。そして、そこにエネルギー削減の余地があるということを。結果に一喜一憂するのではなく、この先自分たちに何ができるかという材料にしていただきたく、よってここでのランキングは不要なのです。
選択するときに大事なことは
子供がアメリカの大学に願書を出すときに、私の常識を覆された思いをしました。
日本の大学数は約800弱ですが、広いアメリカは日本の5倍以上あり、その中から希望の大学を見つけるのです。子供のこだわりは、教授が自分の存在を認識してくれるクラスで授業が受けられるということでした。大きな講堂で何百人もの生徒が受講する環境は望みませんでした。一方、私が志望校を決めたときは偏差値やランキングに大きく影響を受け、こだわりなど正直あまり深く考えていませんでした。
アメリカでは希望の大学に入れなくてもコミュニティカレッジや入学できた大学から希望大学へトランスファーするなど、日本のように受験浪人をしなくても先へ進める道があります。私はそれを敗者復活戦と言っていましたが、単なる「選択」と思うようになりました。自分が希望する環境をいかに柔軟に手に入れるかです。
仕事を選択するときに
本題に入りますが、就職や転職を考えるときに自分がこだわっている、またはこの先、優先したい重要なキーワードはありますか。
去年、菅元総理が「2050年カーボンニュートラル・ゼロ」を打ち出し、SDGsと言われだしてから言葉がこんなにも急速に定着するとは思いませんでした。そして、国の目標をさらに前倒しして取組む企業が多数でてきました。今、私たちが置かれている地球温暖化等の環境問題はすでに自分たちの課題となっています。環境への取組はもはや企業だけでなく、一人一人が取組むべき喫緊の問題です。
文頭にグリーンジョブの定義を平易に書きましたが、今一度読み返すと、普通に当たり前のことと思えます。企業側も働く側もグリーンジョブと切り離せない状況になっています。
下図の斜線部分はILOが定義するグリーンジョブの領域です。グリーン経済業種での雇用と環境に優しいプロセスの観点から業種を区別し、働きがいのある人間らしい仕事としています。
図2 ILOのグリーンジョブの定義領域
出所)ILO「What is a green job ?」に領域の名称と矢印筆者追加(※2)
とかくランキングに左右されがちですが、自分のこだわりを考え直す良い機会かもしれません。
著者プロフィール:
亀本 裕子
(かめもと ゆうこ)
岩手県立一関第一高等学校 理数科 卒。法政大学 工学部 建築学科 卒。
設計事務所に勤めた後、結婚を機に夫の赴任先であるアメリカに滞在、帰国後、シンクタンクで働いている。
国土基盤、エネルギー、環境の分野は建築とはそう遠からず。
一児の母であり、建築家の妻でもある。