MENU

環境ビジネス情報

私の転職ストーリー

 何事もやり始めるのに遅すぎることはない

インターテック・ヘルス・サイエンシズ
マネージャー 鏑木奈保子さん

国際的な食品の流通に関する環境規制対応サポートを行っているインターテック・ヘルス・サイエンシズのマネージャー、鏑木菜保子さんにお話を伺いました。

学生時代、また社会人になられてから2度留学をされ、現在のお仕事に就かれた鏑木さんにこれまでのご経歴や今後、環境分野での就職・留学を考えている方へのアドバイスをお願いしたいと思います。

Q.はじめに大学での専攻を教えてください。

鏑木奈保子さん 高校時代に好きな教科が英語だったので、語学に力を入れたいと思い国際関係学科に進みました。ここでは英語を学びながら、ラテンアメリカや東欧、アジアについて勉強。卒論では東アジア研究のゼミに所属して、日本の近代化と中国の近代化の比較について取り上げました。英語力を伸ばす目的で、在学中に1年間イギリスに語学留学もしました。卒業後は、語学力を活かせる仕事に就こうと思っていましたので、海外に行くチャンスが多いのはメーカーだろうと考え、国際的に展開している電子部品メーカーに入社しました。

Q.電子部品メーカーではどのような業務をされたんですか?

職種としては営業職での採用で、自動車に使われるモーターの営業を担当していました。

業務内容は、製品の仕様決定から納品、その後のアフターケアに至るまで顧客と開発、生産管理、品質保証など社内の各部門との間に立って調整を行うというものです。その中で意外と多かった顧客からの問い合わせが、「この製品は現地の環境規制にきちんと適合していますか?」というものでした。国・地域によって規制の内容が異なるので、同じ部品でもEUではどうか?アメリカではどうか?中国ではどうか?というようにパラパラとお問い合わせがありました。実際にこうした問い合わせに対応するのは品質保証部でしたので、私は直接関わっていませんでしたが、ただ、近くで見ていて環境規制対応の専門家もおらず、問い合わせの質・量に対して人が足りていないような印象を持っていました。

「環境規制」という言葉自体、私もこの前職を通じて知りましたが、今後業務として増えていきそうだな、専門性を身に付けたらキャリアとして面白そうだなと考えるようになり、留学をするために退職しました。

Q.会社を辞めて新しい分野にチャレンジするというのはかなり勇気が必要だったんじゃないですか?

親は心配していたと思います。しかし、思い切ったキャリアチェンジをするなら早めの方がいいだろうと思い決断しました。

2度目の留学もイギリスに行きましたが、環境規制について予備知識はほぼ無い状態でのスタートでした。文系の出身だったので最初は文系の環境政治学を専攻しましたが、勉強するにしたがって、これはある程度理系の知識もないと限界があるなということが分かってきました。また同時に、環境規制の中でも化学物質規制の専門性を身につけるのに必要な分野が毒性学であることもわかってきました。そこで、2年目は大学院を移って毒性学のコースで学びました。

Q.国内大学院は考えなかったのですか?

そうですね。環境規制その中でも化学物質規制に関してはヨーロッパが最も進んでいるという印象をもっていたので、現地で学ぶのが一番いいと考えました。また、語学力も同時に鍛えられるのでなおいいかなと。

Q.大学時代と社会人になってからと2回留学されて違いはありましたか?

全然違いました。2回目は一度働いてからの留学で、勉強内容と仕事の内容を具体的に結び付けながら取り組めたので知識の吸収力が違いましたね。学生時代に仮に学位を取るために留学していたとしても、身に付き方は違ったのではないかと思います。

Q.留学を終えて改めて就職したわけですが、就職活動はどのようにされたんですか?

就職活動は帰国の数か月前から始めていました。まず行ったことはグレイス(環境job.net)さんを含めた転職エージェントへの登録です。ただ、実際登録してみると、だいたいどのエージェントからも求人紹介の前に日本での面接を求められました。当時は大学院の過程がまだ終わっておらず、日本に戻ることができなかったので、海外にいながらの日本での就職活動は難しいのかなと思っていました。そんな中、唯一Skypeでの面談に対応いただけたのがグレイスさんでした。また、グレイスさんはその後の企業への応募もイギリスにいる間からサポートしてくださいました。おかげで帰国したらすぐに面接できるような状態で、あっという間に紹介いただいた会社への入社が決まりました。帰国後そんなにすぐ働き始められるとは思っていませんでしたので、非常にありがたかったです。

Q.ありがとうございます。帰国をされて現職場に入社されたわけですが、今はどのような業務をされているんですか?

鏑木奈保子さん 一言で言いますと、食品に関する各国の規制に対応するためのコンサルティングです。世界の各国・地域で食品素材や食品添加物を販売するに当たっては、その国・地域の安全性審査を合格した上で政府から認可を得ることが一般に求められます。その認可をもらう為の申請書の作成や規制当局との調整を食品メーカーさんや食品の商社さんに代わって我々が行っています。

その中で私のいる日本オフィスの業務は大きく2つあります。

1つは、日本の企業が海外で食品素材・添加物を販売するために必要な行政手続きをサポートしています。2つ目は、逆に海外の企業が日本でそうした食品を売りたい場合必要な日本における行政手続きのサポートです。

また、各国の食品に関する規制の内容についてのお問い合わせもよくいただきます。そうした規制は刻一刻と変化をしていますので、キャッチアップしていくのがなかなか大変ですが、会社のリソースやインターネットなどを駆使して日々アップデートしています。

お客様のご要望を正確に把握するためのコミュニケーション能力と理解力、またインターネットを中心に情報を集める情報検索と情報を整理する能力が求められる時が多いです。

Q.今後はどのような将来像を描いていますか?

鏑木奈保子さん 会社としては、この日本オフィスを拡大して、規制対応能力を上げていきたいというのが目標です。

私個人としては、規制の専門家として、より高度な専門知識とスキルを身につけていきたいと考えています。

また、日本の食文化を海外に紹介していくことに、この仕事を通じて間接的にですが関わっていけたらなと考えています。海外で生活してみて、改めて日本食って本当に素晴らしいと思いました。味付けや食感、盛り付けも、イギリスを基準にすると「そこまでやるの?」というレベルまで細部にこだわっていますし(笑)

こうした日本の食に関する技術・ノウハウは海外でも喜ばれるものだと思います。

Q.最後に環境ビジネスへの就職を考えている方、また留学を考えている方へのアドバイスをお願いします。

私自身の経験から、何事もやり始めるのに遅すぎることはないと思います。私も前職を辞めて留学、転職という決断をする際には悩みましたが、やはり挑戦してよかったと思っています。

環境分野はまだまだやられてないこと、これから新しくできることもたくさんある、非常にやり甲斐のある分野だと思います。環境分野のバックグラウンドがなくても、チャレンジしたいという強い気持ちがあればキャッチアップすることは可能だと思います。

留学については、機会があるならば是非行かれることをお勧めします。母国語以外の言語で勉強することは大変ですが、その言語を修得するのにもっとも効率的な方法だと思います。また母国語以外の言語で勉強することで勉強内容も、より身に付きます。母国語である日本語だと何となくわかった状態でも発言したりレポートを書いたりできますが、他の言語だとそういうごまかしがききませんので、勉強した内容をしっかり理解できていないと発言もできないしレポートも書けません。

勉強や語学修得以外にも得られることが多くあります。私の場合、日本のスタンダードが他の国でのスタンダードではないことを身をもって体験できたことはよかったと思っています。見聞きして頭ではわかっているつもりでも、実際体験してみるのとはやっぱり違いました。

楽ではなくむしろ苦しい道かもしれませんが、その分得るものは大きいはずです。

大変貴重なお話、ありがとうございました。