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環境ビジネス情報

特集コラム ~サステイナビリティとキャリア~

社会のニーズに応えられる
広い視野を持った人材を育てたい

東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻教授(農学博士)
宮下 直 教授

インタビュー キャリア 技術・科学


【左】修士課程 中島さん【中】宮下教授【右】博士課程 筒井さん 【左】修士課程 中島さん【中】宮下先生【右】博士課程 筒井さん

博士課程 筒井優さん

どんな情報を提供すれば農家さんにプラスになるか、コメの生産量を下げずに済むか なぜ僕がこの研究室に入ったかというと、もともと僕は生態学に興味があって、なぜ生物が多様になったのか、どうやって集団を維持しているのかということに興味がありました。特に僕はクモという生き物が好きで、その関係で宮下先生のところに来て研究を始めました。
研究の内容としては、農地を対象としていて、農薬を使用しない田んぼと慣行通り農薬を使用している田んぼでどういう違いがあるかというのがテーマの一つで、特にクモの個体数がどう変化していくのか、周りの環境の違い、例えば森林が多いとか水田だけが広がっているとか、もっと細かいところでは、畦がどう管理されているかによって、クモの数がどう変わってくるかを調べることが最初のテーマでした。それにどんな意義があるかというと、環境保全型農業は、農薬の使用量を減らす分、害虫や雑草が増えやすいんですね。効率的に環境保全農業に取り組むためには、害虫を食べてくれるクモという天敵の役割に注目したわけです。最初はクモがどう個体群を維持しているのかというとこだけに興味があったんですけど、徐々に変わってきて、どんな情報を提供すれば農家さんにプラスになるか、コメの生産量を下げずに済むかということに興味が移ってきて、今はそうした研究をしています。 農家さんは農薬を使わないで自然に優しい農法をしたいとかいろいろ考えていろんな方法を試しているんですが、自分はその方法に対して科学的な視点から貢献できるようにしたいと考えています。

修士課程 中島一豪さん

人の行動の変化が草地を通してわかるんじゃないか、ということを感じています 僕はもともとここにくる前は二次的な里山で、水田で調査をやっていました。そこでは耕起しているものと不耕起のもの、あとは冬季に水を張るものとそうでないもので、出てくる昆虫の種類に違いが出るものかとすごい単純な比較ですけど、そういうものをやっていたんですね。
二次的な自然に前から興味があって、ここの卒業生の方に、ここに決めて勉強したらどうかとアドバイスをいただいて東大に進学しました。
現在は千葉県の北総の白井や印西の草地でバッタの調査をしています。この地域は昔から、馬の餌とか肥料のために草を育てる「牧」が広く存在していて、人間の手による火入れや刈り取りなどで草地がずっと維持されてきました。日本各地にこういう草地は結構あったんですが、戦後の高度成長期とでどんどん宅地化されていきました。そういうところにしか生息できないような昆虫などの生き物もどんどん減ってきてしまっている。草地が潰されて、断片化して残ってしまった状況で、草地の生き物の個体数や種数が周りの環境や管理の頻度(草刈り)によってどんな影響を受けているかを知る目的で、バッタを材料に研究しています。調査シーズンには週に何度も通って、草地を延々と歩いて、太陽に焼かれながら草丈を測ったりしています。
最初はバッタや草丈がどう変わるとかということしか見ていなかったのですが、人の行動の変化が草地を通してわかるんじゃないか、ということを感じています。将来的にはどのような立地で土地改変を受けやすいのか、ある草地を潰すと地域全体の種数や個体数にどんな影響が出るのか、ということを見ていきたいと思います。ここは潰してはいけない、あるいは新しくここに草地を作ったら効果が上がる、という提言にも繋がるようになれば良いと考えています。


宮下 直(みやした ただし)
東京大学大学院農学生命科学研究科生圏システム学専攻教授(農学博士)。
1961年、長野県飯田市に生まれ、伊那谷の豊かな自然の中で育つ。生き物好きの父や飯田高校時代の生物教師の影響で、トンボやチョウなどの昆虫の生態に詳しくなった。
1983年に東京大学大学院農学系研究科修士課程林学専攻を修了。92年「ジョロウグモの生活史における生態的制約と適応」により、博士(農学)を取得。以来、クモ研究者たちとの交流も深まり、2012年から日本蜘蛛学会を率いる。