MENU

環境ビジネス情報

エコリク Newsletter

健康・化学 2017年10月号 見えない敵「化学物質」の脅威

  10月(神無月) 24節気 ⇒10月8日(日)〜寒露・10月23日(月)〜霜降

289種の生物がアメリカに

2011年の東北大震災から6年以上が経過しましたが、その間に船やブイなどに付着した状態で、ハワイ、カナダ、アラスカ、アメリカ本土までたどり着いた生物が289種にのぼることが、オレゴン州立大学などの調べで明らかになったというニュースが流れてきました。中には、船などに付着して、漂流中に数を増やしながらアメリカにたどり着いた貝類なども発見されたそう。また、船や桟橋の破片などに囲まれたまま、イシダイが生きた状態で発見された例もあるようです。

こんなニュースに出合うと、津波という現象に翻弄され、6年もかけて日本から旅をした魚や貝の生命力に感動すら覚えてしまうのですが、アメリカ側から見れば、これは立派な外来生物。その後、どのような扱いを受けたのか? ちょっと気になるところです。

本来はこれほどの長距離を移動することが難しい貝類が、何年もかけて大平洋を横断することができたのは、プラスチックなどの材料がブイや船舶の部品に使われているためと分析しています。何年もの間洋上を漂っても、分解されることのない素材が生物を運んだのです。太平洋上には、こうしたプラスチックやビニール製品が吹きだまりのように集まった海域が存在するといいます。一部には、津波など不可抗力によって海に流れ込んだものもありますが、その多くは不法に投棄されたもの、不注意で海に捨てられたものです。ポイ捨てや不法投棄を減らしていく努力とともに、原因であるプラスチック製品を減らしていくことも必要です。現在の生活からプラスチック製品をなくすことは難しいと思いますが、生分解性のプラスチックに置き換えていくことは可能です。早急な対策が迫られていると言えるのではないでしょうか?

見えない敵「化学物質」の脅威
◆◆15年ぶりに、新たに3物質の室内濃度指針を追加

厚生労働省は、シックハウス症候群など体調不良を引き起こすおそれのある水性塗料の溶剤に使われている「テキサノール」や、接着剤や塗料に含まれる「2-エチル-1-ヘキサノール」など3つの化学物質について、新たに室内濃度の指針値を定める方針を固めました。「シックハウス」が社会問題化した2000年前後にホルムアルデヒド、トルエンなど13物質の室内濃度指針が定められており、新たな物質の追加は15年ぶりとなります。また、すでに規制されていた物質中キシレン、エチルベンゼンなど4物質に関しては、規制強化の方向で室内濃度指針値の改訂が行われます。

シックハウス症候群の主な症状としては、頭痛、めまいなどの他、目の痛み、涙目、喉の傷みや咳、鼻の刺激感や鼻水、嘔吐、吐き気、疲労感、皮膚の紅斑、じんましんなどが報告されています。

シックハウス症候群は、建材や建物の進化により密封性が高まった2000年前後に大きな社会問題となり、ある意味寒暖差の少ない住みやすい住居への進化による文明の落とし子のようなものです。建築業界や室内装飾業界の努力もあり、ニュースや新聞紙面に登場することは少なくなりましたが、シックハウスの問題はその後もなくなったわけではなく、北海道の小学校や大阪大学などで、児童・学生らが体調不良を起こした事例があったほか、一般住宅の新改築時に起きた健康被害などで関係機関にはその後も相談が寄せられています。これは規制に効果がなかったのではなく、原因の多くが指針値のない化学物質に移ったためと見られており、それが今回の改訂に繋がったものです。

シックハウス症候群の原因

今回、追加された3物質のうち、テキサノールは既に指針値のあるフタル酸エステル類の代わりに広く使われているものです。また、2-エチル-1-ヘキサノールはオフィスなどのビニール製の床材に多く使われています。今回の規制強化に伴って、それらの代わりにまた別の化学物質が使われて新たなシックハウスを起こすという「いたちごっこ」に陥るとの指摘もあり、規制のあるもの、ないものを含めた建材に使われる化学物質の室内空気に含まれる総量(TVOC)を測定し、指針値を示すなどの検討も必要になってくるでしょう。

シックハウス症候群の症状の多くは、さきほど紹介したとおりですが、多くは不定愁訴ともいえる症状ですし、また、ダニやカビなど他のアレルギー症状とも重なる部分が多く、なかなかこの部屋が原因という風に突き止めにくい一面があります。特定の部屋に入った途端に頭痛が始まるといったわかりやすい状況なら、内装のやり直しなど対策は立てやすいのですが、そこまではっきりと特定されるケースは少ないものです。症状が疑われる場合は、部屋の換気や日光消毒、こまめな掃除などを心がけましょう。また、めまい、頭痛、かゆみ、喉の痛みなどの症状がどこに行けば増進し、どこに行けば軽減するか、などを記録し、原因となる場所を特定することも必要です。

シックハウス症候群自体は、原因が取り除かれれば症状が出なくなるのですが、こうした症状が続くと、化学物質過敏症へと移行するリスクも高まると言われています。

化学物質過敏症の患者数は、NPO法人「化学物質過敏症支援センター」によると、推定患者数は全国で100万人を超えるといわれています。化学物質過敏症は、室内の化学物質が指針値以下でも、また規制されている化学物質以外のものでも、頭痛やめまいなどの症状を引き起こします。例えば柔軟剤の香りや缶コーヒーの香料。ほとんどの人にとっては、無害であり、好ましい香りとしてとらえられている香りがごく一部の人にとっては、体調不良の引き金になってしまうのです。また、同じ化学物質過敏症の人の間でも、その敏感さは異なります。ある人には感じられないような微量な化学物質にも反応してしまう人がいるのです。

化学物質過敏症に罹患すると、ほんのわずかな香りや物質にも反応してしまうため、就労など社会生活を送れないばかりでなく、日常生活を送るにも苦労されている方もいると聞きます。人によっては、呼吸が不可能になるなど、命に関わる症状を訴えるケースもあります。先ほど紹介した患者数の100万人という数字は、日本の人口の約1%に迫る数字です。この病気の総合的な原因究明や原因と目される化学物質を減らしていくなど、日本全体で取り組むべき問題と言うことができるでしょう。