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環境ビジネス情報

特集コラム ~サステナビリティとキャリア~

環境ビジネスの未来とその課題

環境省 総合環境政策局環境計画課
 中村 隆之 課長補佐(写真右)
 倉橋 征示 環境専門調査員(写真左)
 佐々木 梓乃 環境専門調査員(写真中)

インタビュー 国内・国際 制度・法律
「環境ビジネスで働く人にきく!」今回は「行政」としての視点で環境ビジネスを調査されている環境省総合環境政策局の皆様にお話を伺いました。

現在の所属組織と業務内容について

中村:私たちは、環境省の総合環境政策局という部署に所属しています。特定の政策分野というよりは環境保全の施策を横断的に見るような部局で、例えば地球温暖化対策であれば地球環境局とか、生物多様性の保全や利用の促進であれば自然環境局という、特定の政策分野を持っている局に対して、我々は、複数の政策分野の横串を通す役割を担っています。その局の中の環境計画課で環境経済政策に関する調査や情報の整備、発信を担当しています。
まず、環境計画課がどういった仕事をしているのか簡単に説明すると、一つは環境保全型の地域づくりを標榜しており、例えば地球温暖化対策に関する計画では、国が旗を振るだけではなく、地域に根ざした形で地球温暖化対策が進むことが重要と考えており、自治体の政策立案支援をしています。次に環境計画課という名前のとおり、環境基本計画に基づく施策の点検や、計画そのものの見直しの検討といった業務を担当しています。環境基本計画とは、環境基本法の第15条に基づく政府の総合的かつ長期的な政策の大綱をまとめている計画を指します。その他にも、環境基本法第12条に基づき、環境白書の作成・取りまとめを担当するなど、環境保全に対して色々な角度からの取組をしています。
その中で、環境経済政策の担当としては、環境基本計画で掲げている「環境・経済・社会の統合的向上」の実現に向けて、経済・社会と調和した環境政策の企画・立案や、環境産業の発展に資する基盤の構築を目指して取り組んでいます。「環境」と「経済」に着目した場合、相乗効果が非常に重要であることからも、より環境に配慮した経済活動を行う企業が増えることは目指すべき方向性であり、それを我々は「経済のグリーン化」と表現しています。「環境産業」は持続的な成長を続けており、新たに参入を考えるのは企業の経営戦略上有意義な部分もあるのではないかと考えています。そのような各種情報を調査し取りまとめた上で、広く国民の皆様へ提供しています。
簡単にまとめると、環境と経済に関連する、国民の皆様、企業の皆様等にとって有益な情報とは何かを考えながら、調査研究、データの収集・分析、情報発信に取り組んでいるということです。

(参考)環境省環境経済情報ポータルサイト

より具体的なところをご説明していただけますか

佐々木:私たちは、大きく4つの事業を担当しています。
一つ目が「環境経済の政策研究」で、環境政策の課題について経済・社会への影響や効果等を調査・分析することによって、今後の環境政策の企画や立案に役立てるという目的から、基礎的な理論・分析等の知見を提供しています。

二つ目が、「環境経済観測調査(環境短観)」で、日本銀行が実施している日銀短観と同様に、環境ビジネスの景況感等について年2回定期的にDI(ディフュージョン・インデックス)を用いて測定しています。

三つ目が、「環境産業の市場規模調査」で、2000年以降、国内の環境産業の市場規模・雇用規模、付加価値額、経済波及効果等について推計を行っています。

四つ目が、「環境ビジネスの振興方策検討」で、環境ビジネスを展開する企業を対象に毎年テーマを決め、30社程度に対してヒアリングを行い、参入経緯、市場における位置付け・事業の状況、成功・差別化要因、今後の展望・課題等の情報を収集・分析し、今後の振興方策について発信をおこなっています。

「環境短観」と「環境産業の市場規模調査」はマクロの視点、「環境ビジネスの振興方策検討」はミクロの視点で環境経済を捉え、調査・分析を行っています。

実際は、調査されてみて環境ビジネスの動向はどうですか?いい方へ向かっていますか?

佐々木:環境産業の国内市場規模の推計結果(図1)では2014年に100兆円を超えて、全産業に占める割合(図2)も11.1%まで増加しました。調査を開始した2000年以降、リーマンショックの影響のあった2009年を除けば右肩上がりに成長を続けています。ここ近年では、図1のグラフの「地球温暖化対策分野」が2009年以降特に成長しています。

【図1 図1 環境産業の国内市場規模の推計

【図2 図2 環境産業の全産業に占める割合

倉橋: 「地球温暖化対策分野」の具体的な成長要因として、一つ目はエコカーへのシフト、ハイブリッド自動車の市場拡大。二つ目は、2012年のFIT制度の導入による再生可能エネルギー利用。特に、太陽光発電システムの設置工事やそれによる売電ビジネスが急成長しています。
環境産業は特定の業界があるわけではなく、様々なビジネスの中の環境保全に関連の深い一部を捉えて環境産業と位置付けています。自動車であればエコカー、電力であれば再生可能エネルギー、また、リサイクル系は業界全体が環境産業と分類され、統計的に数字を集めていくと、図のような推計となります。技術革新等により環境産業は日々、新しい環境産業と言える項目が増えていますので、「環境産業の市場規模調査」では、有識者による検討会を設け、毎年どういったものが環境産業に該当するのか検討を行っています。例えば、カーシェアリングはそれぞれが車を所有するのではなく、レンタカーのように必要な時に一台の車をシェアして使いますが、一台の自動車を効率的に使う事を支援するため、このようなシェアリングビジネスも環境産業に該当するのではないか、といった検討を進めています。

中村 隆之(なかむら たかゆき)
環境省 総合環境政策局 環境計画課 課長補佐
倉橋 征示(くらはし せいじ)
環境省 総合環境政策局 環境計画課 環境専門調査員
佐々木 梓乃(ささき しの)
環境省 総合環境政策局 環境計画課 環境専門調査員