MENU

環境ビジネス情報

特集コラム ~サステナビリティとキャリア~

環境ビジネスの未来とその課題

環境省 総合環境政策局環境計画課
 中村 隆之 課長補佐(写真右)
 倉橋 征示 環境専門調査員(写真左)
 佐々木 梓乃 環境専門調査員(写真中)

インタビュー 国内・国際 制度・法律

新卒の学生がどういった仕事をしたいかを考える際に、「環境産業って何ですか」という質問が出る時があります。その際、私たちがお答えするのは全ての業種、業界に環境産業というのはありますと説明しますが、それで間違い無いでしょうか。

中村:会社でも「環境」と名のついた部署がありますが、その部署だけが会社の環境施策を担っているわけではないと思います。官公庁も環境省だけが環境について取り組んでいるのではなく、国土交通省ではエコカーの施策を推進していますし、経済産業省でも再生可能エネルギーの施策に取り組んでいますので、逆に環境しかやっていないという方が少ないと思います。ということは、見方を変えれば、どのような企業でも環境の要素というのは何かしら必ず持っていて、おっしゃるように、環境産業というのは、案外身近で、どこにでもあるものですよ、というのが実際なのだと思います。もちろん環境産業に事業全体が丸々含まれてくるような、リサイクルや自然環境保全等の分野もありますよね。

佐々木:そうですね、あとは環境汚染防止分野とかでしょうか。

倉橋: 環境汚染防止分野系は、理系の学生さんだと興味がある分野でしょうか。土壌・水質浄化や環境経営支援などがありますが、その分野の市場規模の変化は大きくありません。
図中の「環境汚染防止分野」では、2004年が約6兆円で2005年が約12兆円と大きく成長していますが、この伸びの一番大きな要因は規制によるガソリンのサルファーフリー化によるものです。石油業界が規制に先行して硫黄の少ないサルファーフリーガソリンを発売したことが影響しています。このように、環境対応製品が新たな市場を生み出し、市場を拡大させる傾向があります。じわじわ成長する分野もありますが、技術革新や規制によって、これまでなかったものが生まれ、一気に成長するというビジネスもあります。

この業界におりますと、環境の調査会社とか分析会社というのと多数お付き合いをしているのですが、このところあまり景気の良い話がなかなか聞けていないのですが、そのあたりはこれからまた伸びていくと想像できるのでしょうか。

倉橋:公共事業に密接して事業を行っている企業が多くあると思います。

中村: そこを事業の中心にしていると、公共事業の発注数の減少の影響もあると思います。一方で、危機を感じて事業の転換をされたりする企業もあります。例えば、先にお話で触れた環境短観で、今の業況はどうですか?という質問に対し、環境ビジネスを展開している企業と展開していない企業の景況感等を比較しています。その結果から見ると、環境ビジネスを実施している企業の方が景況感は高い傾向にあります。この景況感については、回答いただいている現場の経営者や経営企画担当者の実感も入っているのかなと思います。

これまでのデータを取られていて、今後の予測として、こういった方向へ行くのではないか。その辺りを少しお聞かせいただけないでしょうか。

倉橋:統計的なことになると、将来予測や目標値を業界団体が出していたりするので、今のこの「環境産業の市場規模調査」の事業としては過去しか捉えていないところではありますが、どうやれば将来推計ができるか検討課題として進めているところです。環境短観では、半年後・10年後の予測を聞いており、環境ビジネスを展開している企業の景況感ですと半年先は「あまり変わらない」が多いのですが、10年後は業況が「良くなる」という企業が多いという結果があります。全産業よりも伸びしろがある結果が出ています。「良くなる」という理由として大きいのは、特にエネルギー関係であり、再生可能エネルギーは期待を抱かれていて、現時点のトレンドである太陽光というよりも今後はその他の再生可能エネルギーにシフトしていくと見られています。

太陽光はここ数年で本当に急成長しましたね。

倉橋:太陽光発電はかなり進んでいて、太陽光パネルは田舎道を走っていてもどこでも目にするような状況になっています。ある程度普及が進み設置工事は頭打ちが来ると思いますが、売電事業が市場として残ると思います。それ以外ですと、バイオマス系等いろいろなものをエネルギーに変えようと様々な企業が取り組んでいらっしゃいます。

中村 隆之(なかむら たかゆき)
環境省 総合環境政策局 環境計画課 課長補佐
倉橋 征示(くらはし せいじ)
環境省 総合環境政策局 環境計画課 環境専門調査員
佐々木 梓乃(ささき しの)
環境省 総合環境政策局 環境計画課 環境専門調査員