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環境ビジネス情報

特集コラム ~サステナビリティとキャリア~

水素を活用した環境先進都市への貢献

東京ガス株式会社
エネルギーソリューション本部
エネルギー企画部 エネルギー公共グループ
課長 小宮 純 様

インタビュー 注目・話題 国内・国際

一般の方にとって、水素はこれまでにない新しいエネルギーということになるかと思います。水素を供給するために、安心・安全はもちろんのこと、規制等への適合性を満たすために、どのような取り組みをされているのでしょうか?

水素は着火エネルギーが低く燃焼範囲が広いため、着火しやすいという特徴があります。一方で、非常に軽く、拡散しやすいので着火しにくいとも言えます。都市ガスなどのエネルギーと水素の性質の違いを理解しながら、水素を安全に供給するシステムを構築していくのは、我々に課せられた義務です。
水素の供給に関してこれまで一部のエリアで実施された事例はありますが、事業として長期間行われた事例はありません。過去の経済産業省委託事業や水素実証事業の知見を活かしつつ、高いレベルの安全性を確保するよう検討を進めています。

水素を活用する意義、今回の事業の意義を教えてください。

水素の特殊性は、都市ガスや電気等様々なエネルギーと水から製造できること、使う(発電)とき高効率であること、バッテリーのように放電することがないので、水素に変えてしまえば、エネルギーを損失することなく、長期間貯められることなどです。昼夜の電気負荷の違いはバッテリーでまかなえますが、もう少し長いスパンで考えたときに、電気が余る季節には電気を水素に変えて冬季や夏季のピーク時に上乗せし、地域ごとのエネルギーの需要差を埋めることも水素ならば可能だと思います。
風力や水力発電の余った電気を貯めておいて需要地で使うなど、将来のオプションとして期待値が高いのが水素エネルギーです。今後再生可能エネルギーの開発・普及が進み、電気が余る時代がくると言われていますが、その時に水素を貯めておくことはコスト面でも有効な手段だと思います。

今回の晴海のシステムではそこまではできませんが、まずは水素を市街地のエネルギーインフラの一部として使った事業を実施することで、将来に向けて一歩を踏み出すことが大事だと考えています。

もう少し将来的な展望も含めた水素の活用について教えてください。

国の政策で、2050年には温室効果ガス80%削減が求められていることは皆さんご存知の通りです。水素は使用時に二酸化炭素を一切排出しないので、将来的には、太陽光や風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーと連携したシステム構築のキーとして、期待されています。

水素の普及に向けて、現時点での最大の課題はコストです。水素は電気などの他のエネルギーから作られるので、2次エネルギー、場合によっては3次エネルギーになります。そのように手間暇かけて作られますから、当然コストは高くなりますが、将来的には海外からの大量導入などにより大幅なコストダウンが進む可能性もありますので、長期的な視点が必要です。


小宮 純(こみや じゅん)
  • 東京ガス株式会社
    エネルギーソリューション本部
    エネルギー企画部
    エネルギー公共グループ 課長

  • 1998年工学系研究科応用化学専攻修士課程修了
  • 同年東京ガス入社 基礎技術研究所配属
  • 家庭用燃料電池エネファームの開発・商品化を担当。
  • 水素ステーション建設の主担当。
  • 2015年より、現職。