SDGsについてどのように見ていますか?
17項目の中で関連するところは、都市の安全、強靱化とか色々ある中で、「防災」は確かにあります。災害が起きた時に被災実態を把握するために最初に動くのが測量業界関係の人たちです。なぜすぐに出ていけるのかというと、安全で迅速な測量・調査手法等を熟知しているからです。人工衛星、航空機、さらにはドローンなど多段的な方法を駆使して被災実態を把握でき、発災直後の状況確認から災害査定まで行うことができます。復旧には家屋等の半壊や全壊などをいち早く調査して、それを査定しなければなりません。これは被災者にとって重要な問題であり、測量分野の方々が日夜頑張っています。
土石流で土が被ってしまった、山腹崩壊で山の形が変わった、そのような実態を迅速に測量調査し、先ずは地図(被害実態図)をしっかり作らないと、どこにどんな対策を立てるかなど、基本的な復旧策も立案できません。さらに復旧段階が進むと、より精細な測量が実施され、復興計画等に利用される様々な測量成果を整備していきます。このように災害の発災時から復旧さらには復興に至るまで測量が基盤技術として絡むのですが、意外と測量の人たちの活躍している姿や貢献などが社会に十分に浸透していないことは辛いところです。建設業の方々は橋を架けたり、ダムを造ったりというように成果が見える形で残せるのですが、その形を残すためにやらなければならないのが測量で、測量がなかったら立派な建造物もできません。けれど、最後の完成形だけを私たちは見ているから、これは○○建設が造ったトンネル、ダムとなるのですが、その前に測量の人たちの仕事があるのです。
これらは広報活動が重要になりますね
大手の測量会社は災害が起きたときに必ず航空写真を撮る、あるいは航空レーザ測量を実施する。さらには衛星画像を解析する。それらの情報から災害の現況を把握して、公の機関に提供したり、各社HPで公開しています。また、国土交通省国土地理院のHPには災害以外にも多種多様な地理空間情報が公開されていますので併せてご覧下さい。
私たちの業界では、イベントや出前講座などを通じて一般の方々に測量・地理空間情報技術やその利活用などについて直接的に広報・普及していくことに努めています。そのような広報活動は今後とも積極的に継続していかなければなりませんが、もう一つ考えなくてはいけないのは、間接的な広報です。テレビ番組やマスメディアを通じて我々の持っている技術や情報を公開して知ってもらう、よく芸能人が番組で凄い技術に関心したりしますが、「測量技術はこんなに凄いのか」と、業界に関心を持ってもらう、そうした間接的な広報もしっかりやっていかなければなりません。近々開催の「G空間EXPO2018」では4Kや8Kの高解像テレビ画面によるみせる化技術が話題を呼びそうですが、私たちが航空から測量した極めて緻密なデータを最大限に表現できるツールが登場してきたことで、なお一層、間接的な広報に弾みがかかると思います。同時に、一般の方や若い人たちにも共感を持ってもらえるのではないかと思います。
色々な人に関心を持ってもらうことで測量業界もオープン・イノベーションが進んでいきそうですね。それに対応するためにも、技術者にはさらに多くのことが求められそうです。
測量技術者という範疇から測量コンサルタントへ。そういう脱皮が必要で、そのための糸口なるような教育研修などによる支援策を進めていかなくてはいけないと思っています。
今までもこれからも精緻な測量成果を世の中に供給していくことは測量技術者の使命でありますが、折角それだけの技術を持っているのだから、その先にある測量成果の利活用なども積極的に自己領域に含めれば自分たちの業務の幅が広がりますし、新たな技術そのものに興味を持つ人も出てきます。苦労していいデータを取得して、それを自分たちがまた使って、より高い創造性を発揮できるということが分かると、改めて測量全体に魅力が持てるし、公共に役立つことに繋がるのではないでしょうか。
いい橋を造るためには、いい測量のデータと「これをこう言う風に使えばいいですよ」というアドバイスやコンサルティングがあってこそです。その意味で測量は非常に公共性の高い仕事だと思います。この世界の人はそういったことを今まで「当たり前のこと」と思って言わなかったところがあって、結構奥ゆかしすぎたのかもしれませんね。昔でいえば「沈黙は金」でしたが、今の時代は「沈黙は泥」かなと私は思うので、日本測量協会は率先して外に向けて発信していきたいと考えています。
公益社団法人日本測量協会
瀬戸島 政博(せとじま まさひろ)
- 公益社団法人日本測量協会 専務理事
- 国際航業株式会社にてリモートセンシングを応用した技術開発に従事。東京大学生産技術研究所客員教授などを経て現職。
- 博士(工学、芸術工学)技術士(7技術部門9技術士)、測量士、空間情報総括監理技術者