先生が取り組んでいらっしゃる町づくりでは、SDGsにどのように取り組んでいるかを聞かせていただけますか?
一つは環境自治体会議ですが、来年度SDGsの達成を目指すネットワーク組織に衣替えすることが決まっています。環境関連のネットワーク組織には京都に本部を置く環境首都創造NGO全国ネットワークと合併しつつ、単に統合するのではなく、環境分野からSDGsが扱っている17の分野に対象を広げる形で組織は今動いています。
今まで会員じゃなかったところ、福祉や教育、町づくりに関心があってSDGsを推進していきたいというところが再結集する組織を作っていきたいとしています。
そのための普及啓発活動として、今の会員が環境だけでなくてSDGs的な視点を意識して今後の政策をしていかなくてはいけません。そのための意識づけの手段として「My SDGs宣言キャンペーン」というのを始めています。(http://www.colgei.org/mysdgs_main/)
会員自治体以外のところにも呼びかけて、このキャンペーン活動をやっていきたいと思っていますが、当面は環境自治体会議の幹部になっている自治体に先行的にやっていただいて、順次広げていく戦略を取っています。今環境自治体会議の会員の代表が茨城県東海村の村長ですけど、村長から言っていただいて、私がSDGsの職員研修の中でMy SDGsの入力の仕方をお伝えして、現在100名くらいの職員の方の宣言が集まっています。匿名ですけど内容がWeb上に公表されています。立命館大学の現役の学生と卒業生から作られた学生ベンチャー企業で社団法人SDGs Impact Lab.というのがあるんですけど、そこに委託してWebページの制作や管理をしてもらっています。
自治体向けの「My SDSs宣言キャンペーン」とは別に「学生キャンペーン」というのも同時に始めています。これは試行的に私の授業を受けている学生にやらせたものですけど、うちの学部5学科の学生が「自分はこんなことがやりたい、できる」ということを宣言しています。
立命館大学の学生と芝浦工業大学の学生がこの4月にSDGs学生委員会というのを発足し、この活動を他の大学に広げようとしています。
My SDSs宣言の中に「マッチング問い合わせ」というのがあります。自治体は今若い世代に地域づくりの活動に関わってほしいのですけどツテがない。学生も自分は何らかの形で社会貢献したいけれどもどこにどうやってアプローチしたらいいのかがわからない。そこで、例えば学生が「自分はフードロスについて興味がある」という宣言をしていて、かたや自治体がフードロスについて取り組みたいのだけど人がいない、という時にこの学生に声をかけて手伝ってもらう。地域的に近くないとなかなか実現はしないと思いますが、狙いとしてはこういうことです。また内閣府が「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」を作り、あそこもマッチングを狙っているんですけど、現状では企業と自治体のマッチングに重点を置いているため、学生と自治体のマッチングについては当面は取り組めないということですので、そこで棲み分けもできるかなと思っています。
あとは、先ほど申し上げたように若い世代が主体的に関わる仕組みを作っていきたいということもあるので、私の環境システム学科でSDGsを前面に打ち出してカリキュラムを大幅改訂しました。国連が言っているSDGsを達成する人材を育成するというのもあるのですけど、学科独自のSDGsを語呂で作って、【S:サービスラーニング(社会貢献)、D:デザイン・シンキング、G:グリーンインフラ・エンジニアリング、s:システム・シンキング】グローバルなSDGsと独自のSDGsの両輪で、これまでの授業を全部見直すのと同時にSDGsに紐付けをしてやっています。
その中で特に私が一番力を入れているのは、環境フィールド演習と環境システム応用演習で、学外に出て調査活動や社会貢献活動を行っていることです。内子町での実習として子供たちとの交流という形で授業の一環として地域づくりの現場に学生を半ば強制的に連れて行くアプローチですが、それだけでは主体的な活動が継続しません。そこで今SDGsに関する資格認定制度が作れないかなと思っています。学生は資格に弱く、就活というとワードであれば、あまり動かない学生もビビッとくるので、SDGsに関する基礎知識になるような科目を受け、さらに外でSDGsに関する活動をすると、何らかの資格が得られるというものを作れないかということで、関係方面と今協議しています。
芝浦工業大学
中口 毅博(なかぐち たかひろ)
- 静岡県三島市生まれ
- 筑波大学比較文化学類卒業、博士(学術)
- 芝浦工業大学環境システム学科教授、
- (特非)環境自治体会議環境政策研究所所長。
- 自治体の環境政策を専門とし、地域創生やSDGsに関わる教育・啓発活動を自ら実践する。
- 主な編著書に『環境自治体白書』(生活社、毎年発行)『環境マネジメントとまちづくり—参加とコミュニティガバナンス』(学芸出版社、2004年)『環境自治体づくりの戦略—環境マネジメントの理論と実践—』(ぎょうせい、2002年)など。
著書
- SDGs先進都市フライブルク 市民主体の持続可能なまちづくり 学芸出版社(2019年)