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環境ビジネス情報

特集コラム ~サステナビリティとキャリア~

若い世代がSDGsに主体的に関わる仕組みを作っていきたい

芝浦工業大学
環境システム学科 教授
中口 毅博 様

インタビュー 国内・国際 制度・法律

最後に、SDGsを実現するために求められている人材についてお聞かせいただけますか?

SDGsという視点からは若干離れますが、企業に入ることや資格を取ることが目的ではなくて、その上で他人も自分も幸福感や達成感が得られるような何らかの社会貢献をしなければダメだと授業の初めに学生に伝えています。

目標が単位を取るだけとか企業に入ることだけではダメだと。経団連も、採用時にSDGsの知識・経験重視して登用することを推奨しているから、今SDGsの視点から問題の同時解決の提案ができる人になることが重要だと。例えば防災無線のようなものですね。これから省エネ建築を進めていかなければいけない、だけどそれで建物の気密性を高めて行くと外の防災無線が聞こえなくなる。実際、去年の西日本豪雨で倉敷の真備町で被害が出た原因の一つとして部屋の中にいて防災無線が聞こえなかったというのがあります。そうすると、外にこういうものを出しているのは限界で、今様々な自治体で防災ラジオを導入し始めています。つまり、家の中で防災情報が聞けると、省エネ建築を進めるだけではなくてそのデメリットをカバーするような防災対策をしなければいけないし、また防災ラジオによって高齢者の方の見守りにも使える、外国人の方は日本語がわからないのでゴミをどう出して良いかわからない、そういう方たちへのケアにも使える。

また、一部の地域では地域再生に使って、例えば「今度の日曜日に運動会の練習がありますよ」という情報も防災ラジオで流している。目の不自由な方や耳の不自由な方には文字情報で出す。というような形で幅広く使われ始めているので、そういう複合的な視点を持って解決策の提案が学べるのがうちの学科だよと、学生にはこれからは多面的総合的な視野を身につけて、異なる分野の専門家をつなぐ人材になりなさいということを言っています。

環境システム学科の卒業生に聞くと、一つのプロジェクトは色んな専門家が関わり合ってチームでやって行く時代で、自分以外の分野もそれなりに知っていて、そういう人たちをつないでコーディネートする、そのような人材が不足している。まさにそういうコーディネーターになれるような教育をみんなは受けていると伝えています。おそらく20年後、30年後には今の半分くらいの職業はAIとかロボットに取って代わられるだろう、その時にどういう仕事が残るのか?というと複数の分野をつないでコーディネートする仕事じゃないかと。なので、将来20年後30年後に生き残るためにも、今多面的・総合的視野を持って複数の課題を同時解決できるような提案ができる人材になると、生き残れる、と言っています。

資料を前に話される中口教授学生にはこれからは多面的総合的な視野を身につけて、異なる分野の専門家をつなぐ人材になりなさいということを言っています。

貴重なお話をいただきありがとうございました。 記事掲載日:2019.12.02

中口 毅博(なかぐち たかひろ)
  • 静岡県三島市生まれ
  • 筑波大学比較文化学類卒業、博士(学術)
  • 芝浦工業大学環境システム学科教授、
  • (特非)環境自治体会議環境政策研究所所長。

  • 自治体の環境政策を専門とし、地域創生やSDGsに関わる教育・啓発活動を自ら実践する。
  • 主な編著書に『環境自治体白書』(生活社、毎年発行)『環境マネジメントとまちづくり—参加とコミュニティガバナンス』(学芸出版社、2004年)『環境自治体づくりの戦略—環境マネジメントの理論と実践—』(ぎょうせい、2002年)など。