発電所や変電所、工場、ビルなどの受電設備や配線などの電気設備(電気工作物)の保安監督を行うのが電気主任技術者である。一般家庭で使われている電圧は100~200ボルトだが、工場やビルなどでは6600ボルト、あるいはそれ以上の電圧で受電する。このような高電圧の「事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をする資格」が電気主任技術者だ。事業者は、電気保安のために電気主任技術者を置くことが法律で定められている。
電気主任技術者の資格は第一種から第三種までの3種類があり、種類に応じて取り扱うことのできる電圧の範囲が変わる。第一種電気主任技術者は、すべての事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安監督を行える。第二種電気主任技術者は、電圧17万ボルト未満の電気工作物の保安の監督が行える。第三種電気主任技術者は、電圧5万ボルト未満の電気工作物(出力5,000キロワット以上の発電所を除く)の保安の監督が行える。
国家試験が「電気主任技術者試験」であることから、「電験」という略称が普及しており、「電験三種」のように使われる。
工場やビルの受電電圧で圧倒的に多いのは6600ボルトであり、第三種電気主任技術者が保安の監督ができる。設備監督を中心に行う業務が多く、トラブルがあれば、原因を究明し、ただちに復旧のための措置を取らなければならない。また高電圧を扱う仕事なので危険は伴う。
設備を新設、拡張する時は多忙だ。電気工事の計画、予算積算計上、仕様書作成、見積査定・発注、工事施工・管理までに関わる。
電気が好きな人、大型設備が好きな人に向く仕事だ。スケジュールに沿って保安点検を行うため、几帳面な人が望ましい。設備が発する微細なノイズなどによって設備の状況を判断する場合もあり、繊細な注意力も必要である。
企業内で専門職として扱われ、収入は高い。法律で設置が義務づけられた職種なので、身分が安定している。電気主任技術者はつねに必要とされており、定年後も他の企業に再就職する道が開けている。
企業に勤めると同一設備の保安・監督を行うことになるが、多様な設備を経験したいなら、電気保安法人に勤めることもできる。※電気保安法人は、自家用電気工作物の電気保安に関する業務を行うことが認められた法人で、企業からの委託によって保安業務を行う。
工業高校電気科、大学工学部電気工学科などの認定校で必要な単位を取得して卒業し、実務経験を積んで免状を取得することもできる。認定校を出ていない場合は、電気主任技術者試験に合格することによって取得する。
電気主任技術者試験は難関であり、第一種の合格率は数パーセント、第二種の合格率も数パーセントのことがほとんどだ。第三種の合格率はやや高いが、10パーセントを切る年が多い。いずれも難関資格であり、とくに第一種、第二種のハードルは高い。ただ第三種電気主任技術者の有資格者は電気設備のほとんどの保安監督ができる。
電気主任技術者試験は、一般財団法人電気技術者試験センターが全国で年1回実施し、学歴・年齢・性別・国籍などの制限はない。
第一種と第二種の試験には一次試験と二次試験があるが、第三種試験は一次試験だけだ。 一次試験は理論、電力、機械、法規の4科目だが、科目別合格制なので、有効期限の3年間を使って勉強し、科目別に合格することもできる。
第一種と第二種の二次試験は電力・管理と機械・制御の2科目。科目別合格制度はないが、一次試験合格年度に不合格でも翌年度に限り一次試験が免除される。
詳細は、一般財団法人電気技術者試験センターの「ホームページ」へ。過去の試験問題や解答を見ることもできる。
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