交通の利便性から道路や空港を新たに作ったり、水の利用や洪水の調整のために、ダムや導水路を造るなど、人が豊かな暮らしをするために必要な開発事業をおこなうとしても、環境に重大な影響を与えてまで実施することには問題があります。
開発事業による重大な環境影響を防止するためには、事業計画の内容を決めるに当たって、事業の必要性や採算性だけでなく、環境の保全についてもあらかじめよく考えていくことが重要となります。このような考え方から生まれたのが、環境アセスメント(環境影響評価)制度です。
環境アセスメントとは、開発事業の内容を決めるに当たって、それが環境にどのような影響を及ぼすかについて、あらかじめ事業者自らが調査・予測・評価を行い、その結果を公表して一般の方々、地方公共団体などから意見を聴き、それらを踏まえて環境の保全の観点からよりよい事業計画を作り上げていこうという制度です。
環境アセスメント士は、環境アセスメントに専門特化した技術者資格で、その専門分野によって、生活環境部門と自然環境部門の2つの部門に区分されています。この資格制度は、環境アセスメント実務の適切な実施と環境アセスメントの信頼性向上に資することを目的としています。
環境アセスメント士は、環境アセスメントに関する調査、予測及び評価の実施、環境保全措置の検討、環境影響評価図書の作成・支援、手続等の実務を行います。
また、環境アセスメント士は、「公共工事に関する調査及び設計等の品質確保に資する技術者資格登録規程」(平成26年国土交通省告示第1107号)に基づく「技術者資格」に登録されました。この制度は、民間事業者等が付与する「技術者資格」を国土交通省が登録し、活用する取り組みです。
環境アセスメント士は建設環境分野の調査業務の管理技術者資格として登録され、国及び地方公共団体の業務発注に際し、総合評価での加点評価など、今後ますますの活用が期待されています。
このように、近年の環境アセスメントの高度化・多様化・国際化の進展、地球環境保全意識の広がりによって、環境に関する専門家への期待が高まっており、環境アセスメントを実施するにあたり重要な資格となっています。
多くの環境アセスメント士は、環境コンサルタント、建設コンサルタント、建築設計事務所、総合建設業等の企業に所属し、環境アセスメントおよび環境保全に係わる業務を行っています。
また、環境アセスメントは、急速な技術の変化が伴う分野です。確かな知識と技術の修得のため、資格認定団体である一般社団法人日本環境アセスメント協会及び資格者の集まりである環境アセスメント士会では、定期的にセミナーや勉強会をおこない、自己研鑚に努めています。
環境アセスメントは、専門とする分野についての高度な知識が求められるとともに、法制度や手続き、合意形成等広範な知識と能力を必要とし、さらには、事業者と地域住民、学識経験者等に的確に対応できるコミュニケーション能力、マネジメント能力が不可欠です。また、公共性の高い事業に係ることから高い技術者倫理を持つ人が望まれます。
環境アセスメント分野の資格としては、技術士(環境部門・環境影響評価)と並ぶ専門資格であり、有識者から高く評価されています。収入については、勤めている企業の雇用条件によって異なりますが、資格手当の対象としている企業もあります。
資格の取得方法は、一般社団法人日本環境アセスメント協会が実施する資格認定試験に合格したうえで、同協会に登録する必要があります。
資格認定試験は年1回。例年11月下旬に東京と主要都市数か所で実施されます。受験資格は四年制大学卒業者は実務経験5年以上、大学院修了者は実務経験3年以上、その他の者は実務経験8年以上とされています。受験者数・合格率は変動が大きいですが平均すると約45%の合格率となっています。
受験資格等詳細はホームページをご参照ください。
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