建築士とは、建築士法に基づく国家資格。建築物の設計、工事監理等を行う技術者の資格だ。
建築士の仕事は、個人の住宅やオフィスビル、学校や病院、劇場や大型商業施設等、様々な建築物を対象とする。建築主の要望を引き出し、図面化し、設計図通りの施工が進んでいるかを監理することが業務となる。
また現場においては、図面だけでは伝わらない内容の伝達や、建築主の代理人として工事現場との打合せや指示、また建築主への報告なども業務として行う。
建築物は、周辺環境や社会に与える影響を考慮すると、個人の所有物であると同時に社会公共の存在でもある。自ら手掛けた建築物が、ある時、その街のシンボル的存在となったときの嬉しさは、筆舌に尽し難いものがある。建築士の仕事は、街、景観、文化を作る仕事とも言える。
建築士は、取扱うことのできる建築物の規模、用途、構造により、国土交通大臣より免許を受ける「一級建築士」と、都道府県知事より免許を受ける「二級建築士」「木造建築士」がある。
職域は広く、独占業務である設計、工事監理等のほかに、建築現場の管理、建築物の調査・鑑定、建築物に関する諸申請手続きの代理、都市計画の作成や建築物に関する研究や教育、確認審査業務など、多種多様な分野に渡っている。
独立して事務所を開く建築士もいるが、多くの建築士は設計事務所や工務店、施工会社などに勤め、設計部などの部署に所属している。
また、高校、高専、専門学校、大学などの教育機関に所属し教育や研究にあたる者や、行政機関に所属し確認審査業務などにあたる者もある。建築家として文化・芸術の分野で活躍することもできる。
建築士の仕事は、建築主の思いを法令に則って品質の高い建築物にする事である。そのため設計段階では、柔軟な発想力や企画力、緻密さや美的センス、また自ら提案する積極性が必要とされる。
工事監理においては、工事が設計図に忠実に行われているか、設計者の意図が反映されているか、法令違反は無いかなどを正確に把握し判断することが求められるため、誠実さと強い意志、注意力、判断力が必要とされる。また、チームで行われる仕事のためコミュニケーション能力は欠かせない。
現在登録されている建築士の数は全国で100万人。内、稼働している建築士は60~70万人と言われている。
一時期に比べると新築される建築物の数は減ったが、価値あるものをつくって、長く大切に使う本格的なストック型社会に向かう中、スクラップ・アンド・ビルドからリニューアルやコンバージョン(用途変換)へのシフトが行われ、新たな活躍の場が登場している。
また直近では、2020年の東京オリンピックに向けたインフラ整備事業の拡大も見込まれる。
建築士資格の取得には、年1回行われる国家試験の受験が必要となる。一級、二級、木造、いずれの建築士試験も受験資格として、学歴および資格と実務経験年数を定めている。
国家試験は、学科試験と設計製図試験が有り、設計製図試験は学科試験に合格しなければ受験することができない。なお、学科試験合格者は、翌年および翌々年の設計製図試験の受験資格も有する。設計製図試験合格後、国土交通大臣または都道府県知事より免許を受ける。
平成25年度の合格率は、一級:学科19.0% 製図40.8% 総合合格率12.7%、二級:学科28.3% 製図53.0% 総合合格率19.5%、木造:学科47.5% 製図58.6% 総合合格率28.7%であった。
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