生物分類技能検定とは、野生生物に関心のある人を対象に、正しい分類の知識の向上を図り、調査や保全を担う人材を育てるとともに、動物分類学や植物分類学の発展に寄与することを趣旨として、一般財団法人自然環境研究センターが1999年から開始した生物の分類に関する技能検定制度。
生物分類技能検定は、入門編の4級から生物調査の専門家を対象とする1級までの4段階がある。1級・2級には、動物部門、植物部門、水圏生物部門の専門部門の区分があり、更に1級は部門の中に専門分野の区分がある。
生物分類技能検定1級登録者は、野生生物調査のスペシャリストである。この資格を持つ人の主な仕事としては、自然環境の保全、野生生物の保護・管理、調査・分析、情報収集など。業務にあたっては計画の立案から、フィールドでの調査、取得標本等資料の分析と分類、報告書の取りまとめなどを行うほか、業務全般を主任技術者として統括にもあたる。
1級登録者の9割は、自然環境コンサルティング会社や自然環境調査会社・生物調査会社に所属し、野生生物の調査業務などにあたっている。また、環境省、農林水産省、地方自治体などの環境関連部局や教育機関などに所属するものもある。
データ集計時や報告書作成時はオフィスワークだが、調査の実務を行う際は野生生物を対象とするため屋外での仕事が殆どである。対象生物の生態に合わせた季節、時間に、生息域のフィールドでの調査となる。出張は必然。厳しい環境下での長期の調査は天候に左右されるため、調査スケジュールの変更など、野生生物のカレンダーに合わせ、フィールドで過ごす時間の多い仕事となる。
先ずは生き物が好きであること。業務にあたっては、自然を相手にする仕事のため、様々な場面で臨機応変に対応し、行動を起こすことが求められる。
また、野生生物に関する幅広い知識と専門分野の高度な知識のほかに、野生生物生息域の自然環境等に関する造詣の深さも必要となる。
公的機関からの調査・保全に伴う業務が主な仕事だが、近年は特定外来生物問題や農産物等の鳥獣被害など、野生生物が関係する社会問題への対応や、企業の生物多様性やCSRに関する取り組みの展開により野生生物のスペシャリストとしての知識と経験を求められるようになってきている。
また、公共事業として自然再生事業も増えており、活躍の場が増えつつある。
生物分類技能検定の資格は、一般財団法人自然環境研究センターが年1回行う検定試験に合格することによって取得できる。
生物分類技能検定1級への受験に際しては、3年以上の業務経験(※1)と、2級の当該部門に合格していることが必要となる。
1級は試験に先立って書類審査がある。審査の後、一次試験(論文試験)合格者のみが二次試験(口頭試験)に進むことができる。一次試験では、分類技能を活用した経験に関する記述問題と、専門分野に関する記述問題が出題される。
1級試験の過去3年の合格率は30%ではあるが、合格率の高さには専門分野での業務経験と、2級取得者であるという点が大いに関係している。
生物分類技能検定2級は、実務経験者向け。少数ではあるが、学生の受験者もある。就職を見据えて、4級・3級からステップアップしていく受験者も増えている。
他に類の無い資格のため、野生生物調査等の業務を行っている企業では、生物分類技能検定2級登録者は、即戦力と考えられることもある。
詳しくは、財団法人自然環境研究センターのwebサイトをご覧下さい。
※1:業務経験とは、各種生物調査、環境アセスメント業務、調査・研究、生物関連科目に関する教育、自然解説等。
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